実験で見えないってどういうことか
twitter で@ipmu_supporter さんから Nature に 超対称粒子がLHC でみつからず、超対称性が素粒子にあるという模型が不利になっているという論調の記事がでていたということを伺いました。「 まだ時期尚早という気が門外漢からはするのですが、どうなんでしょう..?」というご質問ですが、まったくその通りです。
まず、LHC で超対称粒子が生成される率と粒子の質量によって全然違います。今回の実験で存在しない、とされた質量の領域はだいたい squark gluino の質量が700GeV~800GeV くらいのところまで、とされています。素粒子を発見するというのはどういうことかというと、多くの場合その粒子は走っているところを見る訳ではなく、それが生成され、崩壊してなにかの粒子になったところを観測します。もちろん一回一回の衝突で新しい粒子が生成される場合もあれば、すでによく知っている粒子を作る場合もあります。シグナルがなるべく見え易い事象の特徴を想定し、その特徴をもった衝突が何回おこったか想定します。それが、その粒子が存在しない場合とくらべて十分に多いかどうかで制限を決めます。
例として、ある新粒子が存在すれば20個期待され、存在しないときは10個期待される場合を考えてみましょう。素粒子の衝突というのは一回一回サイコロをふるようなもので、10個期待されるときに実際に観測されるのが7個であっても13個であってもそれは標準模型が違っていることにはなりません。一方で、観測されている量が20個であれば優位( 3σ)で標準模型と違います。逆に新粒子のみで20個期待されている時に、10個しか観測されていない場合、その新粒子が存在するということはだいたい 2.2 σくらいで否定されている、といいます。今発表されているlimit は 95% CL といわれこれは、2σに対応しています。
今回は超重力模型という超対称模型の一つを仮定して、700GeV~800GeV という数字がでています。これは生成率が "2pb"程度以下でないといけないということに対応しています。これは超対称粒子が 100個程度作られれば制限がつくけれど,それ以下では無理という意味でもあります。この質量より重い超対称粒子はLHCではまだほとんど作られていないので制限のつけようがないのです。ちなみに、LHC で top quark の生成断面積はこの100倍くらいあります。
超対称粒子の質量がこの制限以下で、たくさん作られていても、見えないということもあり得ます。この実験で探索している超対称粒子は安定なLSP (ダークマター)に崩壊します。このときにたくさんの粒子が作られますが、この粒子のエネルギーをあわせると作られる超対称粒子と LSP の質量の差程度のエネルギーは確実に出ます。バックグラウンドとなるプロセスはエネルギーの低い粒子しか出さないことが多いので、高いエネルギーの事象であることを要請してバックグラウンドを減らしています。しかし、質量の差が小さいと 超対称粒子から放出される粒子のエネルギーが小さすぎ、標準模型の粒子の生成が出す信号とかぶってしまいます。
こうなるといろいろ工夫しなければいけなくなります。
アトラス実験が制限を与えた超重力模型は標準的な模型の一つですです。非常に高いエネルギースケールで超対称粒子の質量が同じであると、我々が実際に観測する超対称粒子の間に大きな質量の差がでます。グルーオンの超対称粒子は重くなり、他のゲージ粒子の超対称粒子は軽くなります。クオークの超対称粒子が重くなり、レプトンの超対称粒子は軽くなります。しかし、理論的にはこのようになるべきという保証はなく、実際にある種の模型では、すべての超対称粒子の質量がほぼ同じになることが可能です。一番重い超対称粒子とLSP の差が30%くらいしか違わないとなんの制限もつかないだろうと言われています。(自分の論文で恐縮ですが Discovery of supersymmetry with degenerated mass spectrum.Kiyotomo Kawagoe,(Kobe U.) , Mihoko M. Nojiri, (KEK, Tsukuba) Phys.Rev.D74:115011,2006 など。)
アトラス実験では、特定の条件を要求したときに、新しい粒子由来のシグナルがいくつ以下にならないといけないか、という、より一般的な結果をだしていますので、超重力模型以外での発見可能性について理論の研究者でも比較的簡単に評価することが可能です。私の学生やPD にはアトラス実験の制限を積極的に取り入れるように指導しています。シグナルが見えた時に、現実的な状況のなかで自分の模型のシグナルがどのくらいの量でるか把握できることはとても大事なことです。今年は昨年の約20倍の陽子陽子衝突が期待されていますので、超対称模型に限らず新しい現象が見つかることを期待しています。
まず、LHC で超対称粒子が生成される率と粒子の質量によって全然違います。今回の実験で存在しない、とされた質量の領域はだいたい squark gluino の質量が700GeV~800GeV くらいのところまで、とされています。素粒子を発見するというのはどういうことかというと、多くの場合その粒子は走っているところを見る訳ではなく、それが生成され、崩壊してなにかの粒子になったところを観測します。もちろん一回一回の衝突で新しい粒子が生成される場合もあれば、すでによく知っている粒子を作る場合もあります。シグナルがなるべく見え易い事象の特徴を想定し、その特徴をもった衝突が何回おこったか想定します。それが、その粒子が存在しない場合とくらべて十分に多いかどうかで制限を決めます。
例として、ある新粒子が存在すれば20個期待され、存在しないときは10個期待される場合を考えてみましょう。素粒子の衝突というのは一回一回サイコロをふるようなもので、10個期待されるときに実際に観測されるのが7個であっても13個であってもそれは標準模型が違っていることにはなりません。一方で、観測されている量が20個であれば優位( 3σ)で標準模型と違います。逆に新粒子のみで20個期待されている時に、10個しか観測されていない場合、その新粒子が存在するということはだいたい 2.2 σくらいで否定されている、といいます。今発表されているlimit は 95% CL といわれこれは、2σに対応しています。
今回は超重力模型という超対称模型の一つを仮定して、700GeV~800GeV という数字がでています。これは生成率が "2pb"程度以下でないといけないということに対応しています。これは超対称粒子が 100個程度作られれば制限がつくけれど,それ以下では無理という意味でもあります。この質量より重い超対称粒子はLHCではまだほとんど作られていないので制限のつけようがないのです。ちなみに、LHC で top quark の生成断面積はこの100倍くらいあります。
超対称粒子の質量がこの制限以下で、たくさん作られていても、見えないということもあり得ます。この実験で探索している超対称粒子は安定なLSP (ダークマター)に崩壊します。このときにたくさんの粒子が作られますが、この粒子のエネルギーをあわせると作られる超対称粒子と LSP の質量の差程度のエネルギーは確実に出ます。バックグラウンドとなるプロセスはエネルギーの低い粒子しか出さないことが多いので、高いエネルギーの事象であることを要請してバックグラウンドを減らしています。しかし、質量の差が小さいと 超対称粒子から放出される粒子のエネルギーが小さすぎ、標準模型の粒子の生成が出す信号とかぶってしまいます。
こうなるといろいろ工夫しなければいけなくなります。
アトラス実験が制限を与えた超重力模型は標準的な模型の一つですです。非常に高いエネルギースケールで超対称粒子の質量が同じであると、我々が実際に観測する超対称粒子の間に大きな質量の差がでます。グルーオンの超対称粒子は重くなり、他のゲージ粒子の超対称粒子は軽くなります。クオークの超対称粒子が重くなり、レプトンの超対称粒子は軽くなります。しかし、理論的にはこのようになるべきという保証はなく、実際にある種の模型では、すべての超対称粒子の質量がほぼ同じになることが可能です。一番重い超対称粒子とLSP の差が30%くらいしか違わないとなんの制限もつかないだろうと言われています。(自分の論文で恐縮ですが Discovery of supersymmetry with degenerated mass spectrum.Kiyotomo Kawagoe,(Kobe U.) , Mihoko M. Nojiri, (KEK, Tsukuba) Phys.Rev.D74:115011,2006 など。)
アトラス実験では、特定の条件を要求したときに、新しい粒子由来のシグナルがいくつ以下にならないといけないか、という、より一般的な結果をだしていますので、超重力模型以外での発見可能性について理論の研究者でも比較的簡単に評価することが可能です。私の学生やPD にはアトラス実験の制限を積極的に取り入れるように指導しています。シグナルが見えた時に、現実的な状況のなかで自分の模型のシグナルがどのくらいの量でるか把握できることはとても大事なことです。今年は昨年の約20倍の陽子陽子衝突が期待されていますので、超対称模型に限らず新しい現象が見つかることを期待しています。
by mihoko_nojiri
| 2011-03-09 21:50
| 物理
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