油断するなここは戦場だ

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誤差に迷う Part 2 自費でホールボディカウンターを受ける人のために

前にも書いたことだけど大事なことだからもう一度書く。

首都圏にも ホールボディカウンター(WBC  体の中に入っている放射性物質を測る測定器)の測定をやるところがでてきているのだけどWBC を受けた人が、その結果をどう理解するかという問題だ。

WBC 測定で福島県内で始まってからたくさん相談をうけてきた。福島県内の測定は測定値を理解する以前に、想定されてない高いバックグラウンドのせいで値自体がややおかしい、という結論になりつつある。首都圏だとバックグラウンドは少ないから、測定値についての問題点は福島県内のものよりかなり少ないとは思う。でも測定を受けた人に測定結果がわかりにくいっていう問題は、少なからずあるような気がするのだ。

放射線測定では含まれてる放射性物質が0だとしても0じゃない値が出る時は結構ある。体に入ってる放射性物質の量が0に近いときにどんな値が出るかを表すのが測定誤差だ。例えば 1 sigma に対応する誤差が5の時、まったく放射性物質の入ってないものを100回はかったら 2回、3回と10 を越える
値がでても不思議じゃない。放射線測定は0であることは証明できないけど、これはまず間違いなくなんか入ってるだろうという値は誤差の3倍でこれを「検出限界」という。此れ以下は「不検出」というのが普通だ。(注意:AT1316 は3倍の代わりに2倍ーー95% 信頼区間以下を不検出と呼んでいるかもしれない)

だからWBC を受けにいくにいく人は、まずは、自分の受ける測定が、自分の計りたい精度に達しているかどうかまず知ってからいこう。例えば 品川のWBC が測定できるところでは AT1316 という機種を使っていて3分測定で検出限界が300Bq。これを被験者の体重で割ると Kg あたりの検出限界がでる。体重が 60 Kg だったら 5Bq/Kg 、20Kg の子供であれば15Bq/Kg が検出限界だ。これ以下の数字だったら、ほんとは0である可能性だってある。

次に大事なのはこれ以上だったら自分が心配するという目安量をまず決めておいて、検出限界がこれより十分下だ、ということを確認することだ。目安はいくらにすればいいだろうか。10歳の子供が毎日10Bq 食べると、長期的には体全体にセシウムが 500Bq ぐらいたまる。10歳の子供の体重は平均30 Kg だから これは、20Bq/Kg に対応する。これが一年間でどのくらいの内部被曝になるか ICRP の基準で計算すると一年でだいたい50μSv になる。他の年齢でどういうことになるかは田崎先生のブログに計算方法がかいてあるから、勉強してみたらどうだろうか。

http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/housha/details/CsInBody.html#2)

検出限界より大きい測定値がでたとき、もう一つ注意しておくべきことがある。それは Cs137 と Cs 134 の比率だ。この比率は震災直後は 1:1 だったけどCs 134 は2年で半分になるから、今はたいたい 1:0.8 だ。自分が受けた結果がこの比率と全然違っていたら、貰った紙にかいてある誤差がいくつになっていても、その測定は何か間違ったことをやっているか、誤差の評価が違っていて実は測定精度は十分じゃない。そういうときは、スペクトルをみてもう少しきちんと考えないといけないのだ。

最後WBC 測定をしている人たちにお願いがある。それは測定結果をなるべく丁寧に説明してあげてほしいということだ。「とても少ないです」といわれても現実にそこに0でない数字があって、誤差の意味もはっきりわからないと不安になる人は多い。0 でも数字が出るってすぐに納得できる人はとても限られている。お金をとって測ってるなら、測定値の説明するのは測る側の責任だと思う。

空間線量の高い福島県内では、WBC はまだまだ実験的な段階で、測定を最適化していかないといけない。体からでている放射線の量を体の中のセシウム量になおす部分にまだまだ問題があるから、測定情報、とくに被験者の測定結果を情報公開して、外部からフィードバックが入ることが重要だ。

多くの測定装置ではスペクトルの形からセシウム量を評価する方法を固定して、推定されたカウント数の誤差(統計誤差)だけを表示している。でも、そもそも測定の誤差は、汚染のないものを多数はかって測定値の分布を出して、系統誤差(統計誤差以外の不定性)も含めた誤差を評価するのが本来のやり方だ。。測定値のND (不検出)周辺の分布は測定器の本当の誤差を知る上で重要で、その分布は被験者に公開されるべきだろう。放射線の測定は系統誤差を含めて誤差と測定値がそろって始めて意味があるのだから、
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by mihoko_nojiri | 2012-02-02 18:07

physics at LHC
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