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油断するなここは戦場だ

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林原のチンパンジー

林原グループは先日経営破綻した中堅食品原料、医薬品原材料等の製造販売会社だが、メセナ事業にも熱心で、そのなかの一つに林原類人猿研究センターがある。スタッフ14名チンパンジー8匹のセンターの存続を求めた署名が今日 twitter 上にまわってきた。(http://gari-sonzoku.info/ )が、これをみてもどういう展望があるのかよくわからず困っている。

林原は負債1322億で会社更生法を申請した。法律に詳しいわけではないが管財人は主に債権者にたいして責任がある。つまりなるべく早く不採算部分を整理し、採算部門をだれが責任をもつかという体制を決めるために管財人がいる。今回状況は極めて悪い。不正経理があったので現経営陣はそっくりいなくなることが原則だろう。社会のルールとして、現体制のままセンターを継続するのは大変難しい。

一方で希少種であるチンパンジーをたくさんかかえるこのセンターの研究資産をスムーズに継承するということは、国際的にも大変重要なことだ。チンパンジーが8匹路頭にまよったということにでもなれば、どれだけ国際的に批難をうけるかは想像に難くない。管財人は研究上の価値やマネージメントについて不案内だろう。
銀行とのやりとりや、企業との交渉に忙しい管財人にとって魅力的な「引受先」を、研究上の価値やマネージメントに詳しい研究者が探す努力をすることが緊急に必要tされていることだろう。


署名をするにしても、実現可能な継承のスキームが全く提示されていないことに危機感を感じる。この不景気のなかで全体をひきとってくれる企業があるということは考えにくいが、民間企業に基金をつのるのだろうか?霊長類研究所が引き受けてくれるのだろうか。現状で運営費用は手当されているのだろうか。研究者はどうするのだろうか。運営体制なり引き受け先が決まるまで、チンパンジーの保護はだれがやるのだろう。残念なことにこのオンライン署名には、センターの資産の貴重性や、このセンターを運用する費用といった、「状況を実感できる資料」がほとんどない。もう少し具体的な情報とタイムラインがあれば、広い方にも興味を持っていただけるのではないだろうか。本当の責任者の方が発言されるのは難しいと思うが、関係者の方の情報発信を期待したい。
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by mihoko_nojiri | 2011-02-26 11:00 | 生物

シッターを頼んだことがないお母さんのために

ベビーシッターに来てもらう、というのは、なかなかできない決断だ。

お金も問題については最後に書くが、まず他人が自分の家に入る--しかも自分がいない間に--ということに違和感を覚えて踏み切れない人も多いと思う。仕事にいっていれば家の中は当然それほどきれいではないし、いない間にプライバシーをみられるのではないかと考えると(プライバシーとは何でどれほどの意味があるかはさておいて)親に頼む、仕事を休む、出張を断る等の手段から検討する人が多いのではないだろうか。ただ、仕事は無限に休めるわけではなく、親はしばしば子育てについての意見があわない上に体力に限界があり、近所に頼むのはなんとなく申しわけない。

私の場合は実家は遠くだんなは単身赴任だったが、子供が2歳前に入院し、退院際に医師に「じゃあ一ヶ月は保育園にいかないように」といとも簡単に宣言されるて、始めてベビーシッターを頼んだ。一旦頼み始めてみるとこれは親にも子供にも心地よいサービスで、それまで頼んだ事のなかった自分が「馬鹿の壁」に遮られていたということが分った。

家の環境をそのまま継承できるベビーシッターはベビールームにくらべて安全性が高い。特に病気で保育園にあづかってもらえない時、下手な病児保育施設よりも自宅で寝ていることができたら楽なのは、容易に想像できるだろう。保育園やベビールームは子供にとってはアウェイで、いろいろな緊張がある。他の子供がいない自分の家はホームグラウンドだ。親にとっては、忘れものの心配もない。作っておけばいつもの食事で、アレルギー等の心配もいらないのだ。

家事に仕事に忙しい母親と違い、子供だけ見ていてくれるシッターさんは、子供にとってなにか特別な存在だ。(もちろんそれは母親が事前に食事を作って掃除をしたりしているから可能になる。)適度に体を動かし、声かけをして日常生活の決まりに注意を払ってくれるシッターさんだと、帰宅した時の子供の顔がいきいきしているのが分かる。もちろんシッターさんには当たり外れがあって、漫然とビデオを見せ続けるタイプの人で子供が疲れ果てている場合もあったが、会社に文句をいって変わってもらうことができるのがビジネスの気楽さでもある。

扱いが上手なシッターさんにあたるとかなり充実した時間がすごせる(らしい)。大きくなってくると、子供にとってシッターさんは一種のお客さんで、おもちゃをみせたり、遊びを教えたり子供なりのもてなしをしているようだった。(本人達はそうかなぁというんだけど)京都にいたころの子供たちの一番のお気に入りのシッターさんは、廊下にひっかかかるんじゃないかと心配になるような体の大きな方だったが、帰宅すると、子供たちがなにか「知的な経験」したかのような、生き生きしていたのが印象的だった。いない間に子供がどうしているか心配になるが、頼んでみればなんということはない、子供の顔をみればどういう時間を過ごしたのかはたちどころに分かる。

いいことばかりかいてきたが問題は金銭面。シッター派遣会社と会員契約をすると、仕事が遅い日などに、保育園にお迎えにいってもらったり、家で子供をみてくれたり,というサービスだが、 一時間あたり 2000円程度はかかる。大人一人が一日子供についている上に中間業者がはいるから当然だが、5時間で1万!
私がいままでいたところでは何の補助もなかったが、ここ数年国の支援事業をきっかけに、ベビーシッター補助を導入するところが増えてきたし、( 東京大学 http://kyodo-sankaku.u-tokyo.ac.jp/UT/Activities/kinmutaiyou/babysitter.html 東京工業大学 http://www.gec.jim.titech.ac.jp/sien/babysitter/babysitter.html ) KEK でも他大学の制度を参考に育児支援の制度が検討されている。最近では、家に帰ってくると猫しかいず、食事を作ったおかなくても子供達がショッピングセンターのフードコートにいってくれる
我が家にとっては、いささか手遅れの制度ではあるが、もちろんうれしいことである。

#パートの時給より高いしファミリーサポートも使いにくいという tweet を拝見しました。

## 常勤の方で保育園以外は全部自分でやって疲れてしまった、というような話が時々あるのですが、そういう方が試してみるきっかけになればと思います。話の対象が狭くて恐縮です。
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by mihoko_nojiri | 2011-02-25 21:40 | 自分のこと

恐るべき子供たち

LHC というのは陽子と陽子を衝突させる実験だ。陽子というのは、原子核の構成要素の一つで電荷1をもっていて、水素原子と同じものだ。LHC 実験ではとりあえず3500 GeV (ギガエレクトロンボルト=10^9 エレクトロンボルト)のエネルギーまで加速した陽子同士を衝突せている。ただしこれは「LHC での素粒子の衝突エネルギー」とはずいぶん違う

陽子は「複合粒子」といって、クオーク3つがグルーオンで固められたものでできている。クオークやグルーオンは素粒子(これ以上分割できない粒子)とかんがえられている。特にグルーオンは「強い力」を伝える粒子だ。
陽子と陽子を衝突させると、陽子のなかにいるクオークやグルーオン(纏めてパートンと呼ぶ)どうしの衝突がおきる、そして残念なことに陽子の中のこれらの素粒子は陽子の持っているエネルギーのうちのほんのちょっぴりしか担っていないことがほとんどだ。

陽子ってのは雪の玉に似ている。向いあって雪の玉どうしを投げ合うと、時には雪の玉どうしでぶつかることもあるかもしれないけど、雪玉どうしが正面衝突であたる事は稀で、ほとんどはかすり衝突だ。芯がないからぶつかってもバラバラにくだけるだけで、すごい事はおこらない。LHC 実験でおこる素粒子同士の衝突はほとんどがこのかすり衝突だ。(実はこんなデータまで到底とっておけないので、衝突データのほとんどははじからすてているのだ。LHC 実験の衝突データの総てを、リアルタイムでとる計算機資源はないので、事前におもしろい衝突だけを選び出して残していのである。)

LHC 実験で研究者が待っているのは高いエネルギーの衝突事象である。例えば陽子の中のパートンがたまたま親粒子の1/20もの(苦笑)エネルギーを持っているとトップクオークという一番重いクオークを作ることができる。(トップクオークの質量は陽子の175倍だ)こういう衝突はLHC ではもう20000回くらいは起こったはずだけど、まだ全部の解析結果は発表されていない。こういう現象は陽子の中に確率的に入っている高いエネルギーのパートンが衝突に参加した時におこる。こういう現象が起こる時の陽子っていうのは「小石が入った雪の玉」のようなものだ。外見は普通の陽子だけど、衝突した時に大きな衝撃ーーエネルギーの移動ーー
がおこる。

トップクオークはCDF や D0といったテバトロンの実験でもすでにかなり調べられている。この実験はビームエネルギーはたかだか1000TeV だが、これでも Top quark を作るには十分だし、何よりもうかなり長く実験をしているからたくさんデータがある。LHC実験で我々が待っているのは、トップクオークよりずっと重い新粒子の発見だ。高いエネルギーのパートン同士の衝突の起こる確率はだいたいエネルギーの 5乗に比例して減っていく(つまり大きめの小石の入った雪の玉が出る確率は低い)ので、たとえばトップクオークの2倍の質量の粒子が作られる確率はトップクオークの1/10 くらいだと思ったらいいだろう。

LHCのような陽子陽子衝突実験というのは、効率はそんなによくないけれども、今年は去年の20倍のデータをとって、どんどん新粒子の探索を行う予定にしている。今日 hep-ph にでたアトラス実験の論文では,去年のデータを用いて600 GeV~700GeV 以下の質量をもった「超重力模型のスカラークオークやグルイーノ(クオークやグルオンの超対称粒子)」は存在しないという結果をだしていた。より多くの衝突実験を行うと高いエネルギーのパートン同士との衝突データもたまり、これを解析すると1 TeV 程度の質量をもつ超対称粒子の存在について、何らかの制限ができると期待されている。これがどういう意味をもつかは順々に説明していきたい

#とりあえず雪がどんどこ降った地域の方はLHC のことを考えながら石のはいっていない雪の玉で平和に雪合戦など楽しんでいただければ、と思う。

##ちょっとかきかえました。
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by mihoko_nojiri | 2011-02-14 21:58 | 物理

ロールモデル

学生、PD、大学助手と一人で研究にはげんでいるうちはいいのだが、さて子供ができると生活が一変する。今日はその話。

最近は育休も整ってきて1年くらい休むのが普通になってきたが、私は子供が生まれる直前まで働いていて(金曜日、「う〜ん今日はいままでで一番生まれそう」とかいいながら産休の手続きをして、土曜日に陣痛があった。論文が仕上がらなかったのだ。)産休あけから復帰した。場所は家と職場の途中にある無認可の保育園だ。

まず驚いたのが、最初からフルタイムであづけられるというわけでないということだ。「ならし保育」とといって半日からスタートして、だんだん時間をのばしていくというやり方だ。今にして思うと長い研究歴の一週間が半日になるのがどうしてそんなにという気もするんだけど、当時はすごくいらいらした。そもそも保育が終わるのは6時とかだから職場は5時半にはでないといけない。買い物も、出るまでも支度も子供がいれば倍かかる。

もっと根本的に困るのが病気で、冬になればインフルエンザ、水疱瘡のオンパレードだ。最初のうちは7度5分までは預かってくれるというのでちょっと体調不良っぽくても保育所につれていき、熱が下がったとみるやすぐつれていっていた。しかし、どうせ呼び出しをくらい、医者にいくタイミングが遅くなるだけなので、余裕を見た方が特だということがずっとあとになって分かった。

いままでごく当然だと思っていた大学や企業の習慣、たとえば、時間無制限でだれも決断しない会議や、世間の勤務時間外に設定される会議、土曜や日曜にやるイベントや研究室合宿(日曜に保育所なんかやってない)教授が帰れないと帰れない、あるいは、夜中に重要な研究情報がやりとりされる研究室文化、夜中にくる
さほど重要ではない緊急メールは、何らかの形で出産後の生活や研究の障害になる。子供ができれば生活は一変するし決してもとには戻らない。大人は自分の生活をアレンジすることができるはずだが、子供は親を選べない。

あなたが「最大労働時間」で出していたアウトプットを周囲は要求しつづけるかもしれない。だから大事なことは「日々の生活の不便を周囲に語ること」だ。子供がいるとだばたした一日を日頃から周囲に印象づけておくことは、子連れ研究者の不便さを改善するのにかならず役にたつ。周囲はたいして悪気がない場合だって多い。単に経験がないだけなのだ。そして研究のやり方にも何らかの見直しが必要になる。なかなかいい答えがない問題なのだが。
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by mihoko_nojiri | 2011-02-06 08:12 | 自分のこと

基本のお作法

最近全国の理工系学部で女性大学生獲得競争が本格的に始まった感がある。

理系を選択する女子は現状ではまだまだ少ない。その理由の一つに理系学部における女子比率があるだろう。中学ではま理科や算数が好きという子であっても、高校になると女子比率の多い無難な進学先を選択することを勧められるという話は今でもよく聞く

一方少子化の中、理工系学部は女子学生に熱い視線を送っている。男子の中で理/文系の選択は大きくかわると考えられないが、理系学科を選択する女子の比率はかなりの伸びしろがある。ベースとなる志望者が増えれば質の向上が望めるし、先に女性を増やした学校は、他の女子比率の低い学部に比べて優位に立てるかもしれない。

理系学部の宣伝活動もかなり積極的になってきた。特にこの中でも大事になるのは、「ロールモデル」の設定になる。オフィスで働く女性のイメージはテレビドラマや周囲の人をみてある程度わかるけど、理系にすすんで、どんな仕事をするのか、結婚出産したらどうなるのか、そもそも理系学部で周りが男子ばかりってどうしたらいいの、って特に女子高にいたら思うだろう。

実際、女性の少ない学部にいくと気を使うことがたくさんある。一番困ることは「女の子どうしで固まれない」、ってことだ。ちょっと困った行動をとる男子学生は大学のうちはまだまだ多いから、周りに安心して話せる人がいないと、とっても疲れる。困った状況は一旦始まると長く続いたりするから、そういう雰囲気をゼミだの実験
グループで作らないっていうのは、女性を積極的にうけいれようとする理工学部の責任になる。「セクハラ防止」とか「アカハラ防止」とかそういうことだ。

女の子らしくって言わない、ってうのはセクハラ対策の必須条件の一つ、「基本のお作法」だ。女性比率が低ければどうしても目立つから、容姿とか服とか生活スタイルとか、簡単にいえば一般的に「女性らしいと考えられていること」について周囲に強調されないというのは大事な事になる。もちろん平気な人もいるけど、いやだって思う人もそれなりにいて、例えば「かわいい」と言われて社会人女性が不快に思う率は 24・5% 。美人、きれいといわれて不快に思う女性は 22%。一方社会人男性の91・1%がかわいいといわれて女性が不快にに思うとは考えていない。

ここで本題。それは大学の理系女子勧誘イベント、特にロールモデルとして、女性研究者や先輩学生を呼んでくるタイプの企画に、最近「理系マドンナ」「理系マドモワゼル」みたいに「おしゃれなイメージが付随した女性をあらわす単語」や「女性の感性を生かした研究」といった文言が増えてきたことだ。

ぶっちゃけあなたがその部署で一人しかいない女性PI(研究室の運営に責任ある人のこと) だとして、学部のマドンナって言われたいか、といえば、半分くらいの人はむっとしてそれなんですか?っていうと思う。女性の感性を生かした研究ってなんだろう?少なくとも私の研究分野には女性村はない。

女性比率を増やしたい理工系学部や企業のしなければならないことはたくさんある。女性であるということを意識せずに、チームの中で仕事ができる、とか、子供ができたときにメリハリのついた時間配分がされていて、出産後も勤められるということは大事なチェックポイントだと思う。育児も仕事もなんとかなるけど、大変さは周囲の意識でずいぶん変わる。今年も大学からはたくさんのアウトリーチ活動があると思うけど、女子学生の人たちには、訪問した大学で「本当に聞かないといけないこと」を聞いてきてもらいたいな、と思う。
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by mihoko_nojiri | 2011-02-05 23:34

physics at LHC
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