油断するなここは戦場だ

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月曜日は真空からエネルギーを汲む(マテ

小飼さんの ブログ から

"野尻さん(♀かつS. Factの方)にはぜひ真空エネルギー抽出法を見つけてもらって太陽系一の億万長者になっていただくとして(笑)" というお題がでているわけですが(^^; )

いやちょっと困った。


宇宙は一度真空からエネルギーを汲んでます。昔真空にはたくさんのエネルギーがありました。アインシュタイン方程式を信じると、空間はエネルギーがあれば膨張するという性質をもっているので、宇宙はすごいいきおいで膨張していました。この時期の宇宙の状態を、(第一次世界大戦後のドイツのインフレの時の物価上昇と同じようなペースで膨張するので)インフレーションといいます。インフレーションが過去におこったということは、宇宙の一様等方性や CMB の観測からほぼ間違いないと多くの研究者が思っています。空間が広がりすぎたので、ある場所にある粒子は0といっていいくらい薄められています。(どこかで聞いたフレーズですね。)

”真空のがエネルギーをもっている“というのは変な言葉ですが、いってみればチベット高原に住んでいるようなものです。チベット高原は標高4000mくらいですが、そこにすんでいる人は自分のすんでいるところは十分平坦だと思っているでしょう。高原のはじにいくと始めて自分が何か高いところにいる、ということに気がつくのではないでしょうか。

今考えられている宇宙論では、真空のエネルギーの高い場所にいるのは”スカラー場”だということになっています。この場を”インフラトン”といいます。宇宙の始め(つまりこのインフレーションが終わったときに)にこのスカラー場は自分のいる場所がどうも高くて、もっと低いところがある、ということに気がつきました。そして、物理法則に従ってこの低い方に向かって転がり、勢いあまって一番低い場所をとおりすぎ、その周りで振動をはじめました。お椀の中にビー玉をほりこむと一番低いところの周りをいったりきたりする、そんな感じです。

この振動から別の粒子が生まれてきます。最初に振動しているのはインフレーションをおこしたインフラトンだけですが、その振動エネルギーが今度は他の素粒子を作り出すの使われるのです。バイオリンをイメージするのがいいかもしれません。バイオリンでこすっているのは弦だけですが、音を出しているのは楽器全体です。単純な弦の振動が、楽器全体に伝わって、楽器の音が決まるわけです。宇宙に存在する粒子はすべてこの振動からうまれたというのがインフレーション模型です。

今の宇宙でも真空のエネルギーは0ではありません。でも、宇宙船の中に変なエンジンをおいて、この真空のエネルギーを取り出して宇宙船を推進する、、、これはとってもまずい考えのような気がします。そのためには、今の真空よりエネルギーの低い真空が必要です。今の真空と本当の真空の境目になにか障害があって、今の宇宙は準安定な場所に引っかかっていると仮定します。崖の手前に窪地があって、今の宇宙はそこにいるというイメージです。人工的にエネルギーが低い空間を発生させると、エネルギーの低いい空間と高い真空が接することになります。するとエネルギーが高い真空はエネルギーが低い真空に引っ張られて低い真空ににおっこちます。そしてあっというまに宇宙全体がエネルギーが低い真空にかわります。遠くへいきたいという人間のわがままが壮大な宇宙ドミノ倒しの引き金を引いてしまうのです。

これは、過飽和状態の液体のある場所に刺激をくわえると、一瞬にして液全体に固体が析出する現象と同じです。これは一次相転移といわれます。過飽和がどんな感じかはこちらの"動画" でご覧ください。透明な液体部分がエネルギーの高い真空、固体が析出した部分がエネルギーの低い真空に対応しています。

相転移がおこったあとどうなるかですか?知りません(キリッ

というわけで、クラーク先生ごめんなさい。そっちは無理だと思うので、外の方法さがしましょう。水星にレーザー基地? あそこ結構暑いんですが。。。


追記 なぜ真空が接していると隣も低い真空に変わるか、ですが、真空のエネルギーを高くしている場は隣同士で繋がっているからです。一カ所でだれかが飛び降りると。。。

追記2 ええ、「あっというま」って光速のことです。航行につかえないにはそれで十分。

追記3 私は今の真空って 鉄板だとおもってます。
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by mihoko_nojiri | 2010-10-04 18:19 | 宇宙物理

日曜日の夜は白テープでレトロSFの香り

京大物理で3回生の時、物理の実験で「加速器」だの「ビーム」だのを始めてまじかにみた。今や25年以上前のことだ。これは、京大理学部物理学教室の中庭にあったバンデグラフというタイプの加速器で、A1実験の最後に金属の薄い箔に陽子をぶつけて、陽子が原子核にあたって向きが変わるラザフォード散乱という現象を観察する。

加速器といっても陽子のもつエネルギーは たかだか10MeV、 つまり 陽子の速度を光の速度でわると0.01 程度というあかちゃん加速器だ。解析使うコンピューターは穿孔テープ(だたの白い紙テープに穴があいているもの)でプログラムを読み、その読み取り機も手作り風で、コマンドはターミナルではなくてスイッチでいれるというものだった。当時すでに紙テープを作る技術は失われており(笑)、コードを理解している人もすでに去り、くしゃくしゃに折り畳まれた小さいメモの教えるとおりスイッチを上げ下げすると、陽子の運動量を測定する計算システムができあがる。当時すでに大学の計算機センターにいけばラインエディターのターミナルがあり、カード読み取り機は時々教授が使いにくる程度という時代だったが、ラザフォード散乱を再現する程度の学生実験にたいしては、使えるものはいつまでも使うという方針がとられていて、実験室はさながらレトロSF博物館の様相を呈していた(違

そんなあかちゃん加速器でもビームに勝手に近づけるわけではない。ビームラインに立ち入るときには鍵をもって入るきまりで、作業が終わった後総ての鍵がボックスに差し込まれないと加速器は動かない。実験中に部屋に入ると被爆する危険があるからである。昔この加速器のビームを手で遮った(しかもわざと)伝説の人物がいて、事故の後手がものすごく腫れ上がったという話(何度もくりかえすが冗談でもなんでもなく実話である)を実験説明の時に聞かされるというのが慣例になっていた。

高速の陽子が物にあたると何がおこるだろうか。陽子があちこちにぶちあたるとそのはずみで高いエネルギーの光がでる。光はさらにあちこあたって、さらにたくさんの電子や光がでる。この過程が電磁シャワーで、これが人体の中でおこると様々な障害を引きおこす。遺伝子をきずつけるのが一番の問題でガンの引き金になったりする。

さらにエネルギーが高くなると陽子が原子核の中に入って原子核をぶちこわすというさらに荒っぽいことがおこる。原子の種類が変わってしまい、放射性原子も作られて、これがゆっくりと崩壊すると、長く放射能の影響がビームのあたったところに残る。陽子の速度が光の 1/10くらいになると原子の種類によってはこういう反応がおこるのである。

昨日、JAXA の野田さんやサイエンスライターの鹿野さんと、20光年先に新たに発見されたグリーゼ581gという地球型の惑星の話になった。いくだけで100年か、亜高速にでもせんとやってられないな、という話をしているうちに、なんだ、それ宇宙船がビームってことじゃないか、ということに思いいたった。われわれのまわりのものはすべて陽子や中性子でできていて、それが光速の1%まで加速されたら、バンデグラフからくるビームと同じ速度になっている。光の速度の10% までいけば、あたった原子核を分解するレベルである。光の速度の70% までくると陽子と陽子がぶつかって中間子が多数生成されるハドロンシャワーだっておこる。 宇宙のなかをのんびりただよっている分子に突っ込むだけで、高エネルギー衝突反応がおこり、機体が放射化する、、、、う〜ん困ったなぁ。

小飼弾さんに教えていただいたのだが、だが、アーサー C クラークの「遙かなる地球の歌」ではこの問題を宇宙船前に長い氷のキャップをかぶせることで解決することが 提案されているらしい。非常に分厚い物質があれば、粒子はその中に完全に止められる。もちろん全部放射化するが人間の居住区まで放射線が浸透しなければOK ということだろう。 (それでいいのか、という気もしないでもないが。)

光の速度の10%のスピードで目的の星まで200年。その星までついて、帰ってくるとしたら400年。それほど長い間同じ装置を動かした経験をわれわれはもっていない。そして、一人の人間の寿命を遥かに越える飛行時間。唐の時代、玄奘三蔵が中国からインドに教典をとりにいく旅は15年かかり、彼の寿命は約60年だった。人生の25%を過酷な旅に費やすのもいいかもしれない。だから宇宙にいくためには、まず人類の寿命を1000年にのばすことを考えるべきなのだろう。。。。
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by mihoko_nojiri | 2010-10-03 22:29 | 物理

physics at LHC
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