油断するなここは戦場だ

カテゴリ:物理( 23 )




コライダーの物理の勉強会

コライダー物理の勉強会

場所:IPMU seminar room B
日時:11月12日 13:30-

13:30-15:30 (休憩あり)"LHC の物理をコンピューターで再現する
  pythia8 から delphes3 まで"  野尻(KEK)

16:00-17:00 "CheckMATE introduction"  高江洲(東大)

pythia8 というイベント生成コードを使って、
イベントを作り、detector での smearing などの
影響をみる Delphes を通して root というファイル
を作り、簡単なコードでそれを解析します

hepmc,pythia8
root, Delphes 

が必要ですので install してください。hepmc -> pythia8,
root-> Delphes というようにinstall するのがスムーズです。
install については、とりあえず一度もコンピューターで
数値計算をしたことがない人はメールで回覧したメモを参照し
てください。それ以外の人は、
http://nojirimiho.exblog.jp/ にあるリンク等を参照して
ください。install に困ったら連絡してくれるとページが充
実します。

なお pythia8 については, 最新の verion 8201 をダウン
ロードして directory に入り、もっとも簡単にすませる場合で
$./configure --with-hepmc2
$ make
とて成功したことを確認したあと
$ cd examples
$make main41
$./main41
などとうって、何か正しそうなことがおこっているか確認してください。


さらにcheckmate introductionを 高江洲さんにお願いしています。
checkmate は今の実験データで何がすでに排除されているか見る
ツールです。

これを使って自分が生成した new physics process が
すでにLHC RunI 実験で排除されているか確認することを最初の
目標にします。

#なお間に合えば、より高度な内容( Delphes の構造とか)についてメモを渡します。
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by mihoko_nojiri | 2015-11-09 17:45 | 物理

コンパイラ

数値計算をコンピュータに行わせるためには、特定の言語 (c,c++ fortran ) でかかれた
数値計算の手順を実際に機械に行わせる作業に変換することが必要です。この作業をする
部分をコンパイラといいます。コンパイラは機械が直接解釈できる、オブジェクトファイルや
実行ファイル、ライブラリなどを作ります。

gcc は c, c++, fortran などのコンパイラの集合体です。多くの言語がgcc の
バックエンド部という共通の土台に乗っているために、異なる言語で書かれ
たコード同士を相互に呼び出すことができるという特徴をもっています。
逆に、異なる version の gcc で書かれたオブジェクトファイル同士を相互に
利用することはできません。システムを新しくする場合などに、実行時、
リンク時にエラーが生じる時は、エラーの内容を読んで、古いオブジェクト
ファイルを削除し、新しく構築してください。今回指定したツールには、
c++ のソースコードだけが含まれているので、問題はおきないはずです。

ハードディスクが大きくなったため、最近のhep関係のツールは一旦
中間ファイルを作って、自動化した手続きでそれをやりとりするコンセプトに
変わりました。それでもノートPC 等ストレージの貧弱なPC で、多数の
イベントを作ってそのまま保存することは難しいです。

尚、Mac で Xcode を導入するとgcc が入りますが実態は clang です。
clang は gcc の置き換えを目指したコンパイラです。チェックはgcc より
厳しい印象です。
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by mihoko_nojiri | 2015-11-06 22:25 | 物理

コライダーの勉強会:コマンドラインでの作業

コライダーの勉強会で使うコード類はコマンドラインで作業する必要があります。コマンドラインで作業になれましょう。

1)

ls directory の中身の一覧

ls -l 属性も含め表示

ls -lh さらにファイルのバイト数を人間にフレンドリーに表示

ls *.cc .cc というファイルだけ表示

2)

rm file 名とすると file を消すことができます。つまり rm * とやるとそのなかのファイルがすべて消えます。
これを避けるために
home directory の下の .bash_profile の下に以下のように書き足すことを強く勧めます。

alias rm='rm -i'
alias ls='ls -FG'

これを書き足したあとで terminal を閉じて再度ひらいて
alias rm とうって

alias rm='rm -i’
となることを確認。

rm file1 とやると
rm file1? と聞いてくるので yes と答えるとfile が消える

うむを言わさず消したいときは rm -f

directory を file もろともてしたいときは rm -r

そのほか mv (移動) cp (コピ-) chmod(ファイル属性の変更)などは使うはず。

ジャンル別UNIXコマンド一覧 (*BSD/Linux)
http://x68000.q-e-d.net/~68user/unix/genre.html#genre0

3)

grep hogehoge *.cc *.cc というファイルの中で hogehoge という行があるところを表示

diff file1 fil2 file1 と file2 の中身の違いを出力

diff file1 file2 >diff_file とすると差が diff_file に書き出される
> は出力リダイレクト といって、標準出力(画面の吐き出し)をファイルに書く。
>& は標準出力だけでなく標準エラー出力も書く。



4)
emacs :editor です。
 emacs コマンド一覧(置換・コピー・検索・終了)
http://uguisu.skr.jp/Windows/emacs.html

vi 別の editor です。破滅的なことが起こったときに
   http://net-newbie.com/linux/commands/vi.html

5)
terminal で env と打ってみる
いろいろ出ますが、PATH とかいてある行を見つけます。

PATH=/Users/nojiri/root/bin:/usr/local/bin:/usr/bin:/bin:/usr/sbin:/sbin:/opt/X11/bin:/usr/texbin
terminal でのコマンドはここで指定された directoryのものはfull pathでかかなくても使えます。

terminal でうって使えるコマンドは、 which コマンド とやるとどこに実行ファイルがおかれているかわかる
$ which emacs
/usr/bin/emacs

なので ~をinstall したはずなのに立ち上がらないのであれば、このPATH のあるところにおかれていないから。
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by mihoko_nojiri | 2015-11-05 11:59 | 物理

コライダー勉強会下準備

11月12日のコライダーの勉強会に参加する人へ。

職場のweb への入り方がわからなくなったので、とりあえず
こちらから。

当日までに

root
hepmc
pythia8
delphes3

はinstall ずみとなるようにしてください。(とりあえずinstall しようとしてみてください)
なおメールで ElCapten 用のおすすめ手順を流します。


・hepmc は イベント記録するための共通のインターフェースです。

http://lcgapp.cern.ch/project/simu/HepMC/download/
ソースをダウンロード
・ directory に入って
以下それぞれ異常がなければ

$ ./configure --with-momentum=GEV --with-length=MM
  $ make
  $ make check
$ sudo make install
などと進みます。  configure -> make -> make check -> make install が普通です。
 
いろいろ問題が発生するかもしれませんが、とくにターミナルで 
$gcc --version などとうってありませんといわれたら、 gcc がはいっていないので、
mac の方は Xcode などいれてください

同様に、ROOT install
https://root.cern.ch/downloading-root
ROOT 5 をいれてください

Pythia8 (down load)
http://home.thep.lu.se/~torbjorn/Pythia.html

$ ./configure -―with-hepmc2
と最低hepmc と使えるようにしてください。

Delphes (簡易 detector simulartor )
https://cp3.irmp.ucl.ac.be/projects/delphes

問題が発生した場合は、それぞれの機関で詳しい人にきいてください。
(東大ー>TE洲くんかEさん  柏キャンパスー>Tさん KEK-> 野尻)
問題が発生した場合に野尻まで報告いただけるとこのページが
充実します。

それではよろしくお願いします。
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by mihoko_nojiri | 2015-11-03 23:42 | 物理

日本学術会議の連携会員になりました

日本学術会議の連携会員になりました.(第23期,第三部,物理学)

前政権の時に総合科学技術会議の基本政策調査会にいたことがありますが,
それ以来の久しぶりの公職です。

6年ほど前に推薦してもいいがどうかというお話があったのですが,
そのときは、差し障りがあってお断りしたように記憶しています。この6年の間に震災
があり,個人的にはいろいろやったのですが,連携会員であれば,より広い方
からのお話が伺えたかな、と思ったりします。

今後ともよろしくお願いします。
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by mihoko_nojiri | 2014-10-07 11:12 | 物理

定量限界

定量限界、検出限界という言葉を最近よくきくようになりました。定量限界は測定誤差の10倍、検出限界は測定誤差の3倍ですが、この違いをイメージするのは初めての人には難しいと思います。

食品や体の放射線の測定をするときは、空間放射線などのバックグランドの上に、汚染からくるカウント数の増加があります。汚染が0の食品であっても、誤差=バックグラウンドのふらつきが有りますから、測定数ー期待されるバックグラウンドは、誤差程度の幅をもってふらつきます。ここで誤差が5(単位はなんでもいいとします)であるときに、汚染のない食品を1600個測定したとします。このときの分布を計算機でシミュレーションすると図の上のようになります。今市場にある食品の大半は汚染が少ないものが多いので、食品を測定すると、こんな感じになるでしょう。

たくさん測定すれば汚染されているものも混ざっているでしょう。測定の目的は汚染されたものを見つけることのはずです。1600 個の食品のうち100個が15程度の汚染があるとします。この時この 1600 個の食品を測定すると中段の図の点線のようになります。このうち汚染された食品の分布は実線でかいてあります。全体の分布をみると一つ前の分布のように0をはさんで対称ではなくて、右側にあきらかに汚染品が固まっているのが分かると思います。ただ、測定値が10 だった時に、汚染されているか汚染されていないか、と聞かれると確率 1/2くらいで、どちらとも断言できない状態です。測定値が15であれば汚染が0ということはほとんどない、ということもわかります。つまり検出限界というのは、このくらい大きければまず汚染0ということはないね、という値という考えかたができます。

汚染が15 あるからといって、測定値は必ず15というわけではありません。定量限界程度汚染されている食品の測定値の分布は0近くから30までの間にばらついています。つまり測定値から、汚染量を推定しようとしても倍以上のばらつきがでてしまうということになります。量を定める「定量」できていないのです。

次にカウント数の増分が0以下になった部分に目を向けてみましょう。0以下になった部分は、汚染された食品がない場合とあまり変わらないことがわかると思います。正にずれたものの分布には汚染されたものの影響が入りますが、負にずれた分にはそれ影響が少ない、つまり測定誤差を評価する上で重要になるのは、負にずれた部分の分布ということになります。(放射線測定器にはバックグラウンドよりカウント数が下にずれた場合の値を出さないものが多いようですが、誤差を評価する大事な情報を捨ててしまっていると思います。)

最後に同じ測定にたいしてよい測定器を導入して誤差が 1.5 になるようにしたとします。この測定器で同じサンプルを測定したものが一番下の図になります。汚染されていないサンプルと汚染されているサンプルがきちんと分かれて、重なりがない状態になっています。そして値が +/- 5 の間に総てのサンプルが分布しています。これが定量できている状態です。

数字の変化を追いたい場合は、最低限計りたい値に定量限界が達成されている必要があります。食品を測る時は、余裕をみて食べないという方法も取れますが、人間の内部汚染を測った結果か高かったからといって捨てるわけではありません。時間をおいて定量して差をみていくということが重要になります。例えば20Bq/Kg 以下を目指すのであればホールボディーカウンターの定量限界として、大人で ~1000 Bq 程度、つまり誤差で~100 Bq、検出限界として =300 Bq 程度の測定器が望ましいということになります。(もちろんこの値は目標設定が変われば変わりますが、この定量限界を満たさないホールボディカウンターが使われてる状態であるのは間違いないようです。

このほかに民間の測定機関が提供する検査に前回のエントリーで振れた尿検査があるようですが、ホールボディカウンターで定量できる人体あたり1000 Bq の汚染にたいして、尿に出ると期待されるセシウムの量は一日あたり 10 Bq 程度。一日の尿量を1L とすると 定量限界で10Bq/L 前後が対応するようです。ただ内部被曝と尿中のセシウム量の関係そのものに大きな幅があり http://rpd.oxfordjournals.org/content/64/4/313.full.pdf 内部被曝を推定する手段として疑問の多い方法だといえるのではないでしょうか。


d0164049_21591452.jpg


追記

ちょうど早野先生がこのブログの内容と関連するデータをあげていたので、追記します。福島市の WBC のデータなのですが、上のヒストグラムをみると0の人が40人いて、それ以外にたくさん検出しているという印象をもつ方が多いと思います。このヒストグラムでは人がWBCにのっている時のカウント数からバックグラウンドを引いて0になったものがすべて0に纏められています。実際のカウント数は下の図で、この40人は「負の増分」のデータであったことがわかります。この負の部分は統計誤差を評価する実データとなります。実線は負のデータから正規分布を仮定したときの測定値の広がり=「分散」を評価したもので2例をのぞいて、内部被曝0と考えることもできるデータだということがわかります。(ただし、中央に分布しているものの平均は若干0より多いと考えられます)検出限界はバックグラウンドによって変わるもので「カタログ値」としてバックグラウンドが書かれている場合はどういう環境で実現できるか確認する必要があるでしょう。
d0164049_19294644.jpg

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by mihoko_nojiri | 2011-12-03 22:01 | 物理

人間を測る責任

一つ前のエントリーで、放射線の測定では測定値は誤差とセットで意味があると書いた。

たとえば、セシウム領域の測定値が 100で誤差が 2 だったとしよう。このときに実はバックグラウンドが90 あったとするとセシウム分は100-90 =10 であるが、 本当の値が 8 から12 までの間にある確率は68.3%。 6から 14までの間にある確率は95.4%。 4から 16 までの間にある確率がおよそ 99.7 % (厳密にはこれは正規分布を仮定している.)

放射性物質の量が正確に分かっているときに、測定した値はどのように分布するだろうか。バックグラウンドの値が90セシウムの値が 10 が平均で誤差が2である場合実際の測定値が 98 ~102である確率は68.3% 96~104 である確率は95.4%.. 「本当の値から予想される測定値の分布」は、「測定値から予想される真の値の分布」とよくにている。

精度の良くない測定の場合はどうだろうか。たとえば測定値が 100、誤差が20 と期待される測定があるとする。この時測定値が 40から160 に入る確率は99.7 % で、0.15% の確率で160 以上の値がでる。また、16% 以上の確率で測定値が 120 以上になる。バックグラウンドが 90 であるとするとセシウム分の寄与は前者の場合には70 になり、後者の場合には 30 になるだろう。前者のほうは1000くらいの検体を処理すれば1つや2つの検体で起こりうることである。

誤差の評価を誤るというのはこの数字の意味づけを誤るということである。たとえば、上記の測定で誤差を10と思い込んでいるとすると70 という測定値は 誤差の7倍ということになり、本当の値が0であることは100万に一つもありえないという間違った結論になる。

先日 ある会社が南相馬で尿の無料測定をし、その結果がいくつかの報道機関で報道された。尿検査値というのは Ge の精度よい測定で報告されているものについては 首都圏の人が測定したもので 1Bq /L 前後が多く、福島等で多い場合でも10Bq/L 程度なのだが、この報道では100Bq/L を越える値が出て、多くの人を驚かした。その後ネット上で検証がされた結果、この測定に使われている装置は、食品のスクリーニング、つまり放射性物質が入っている可能性のある食品の事前調査のための機械であり、さらにその定量限界が、複数の放射性物質が入っている場合にカタログ値の20Bq/L より遥かに大きく50Bq/L 程度であるという話も伝わってきた。Cs 134, 137, K の寄与の切り分けが難しくまだ多くの課題が残される測定方法のようだ。(参考 http://togetter.com/li/209967)

問題はいろいろある。尿に入っている放射性物質は一般的に食品中に入っているものよりはるかに少ない。期待される測定値が 0Bq/L 程度の時に、誤差 10 Bq/L の測定を行ったとするとほとんどの人が中数Bq/L の値を、そして、一部の人は30 Bq/L の測定値を受け取るだろう。誤差が不明ということは、その意味づけが不明ということだ。測定を受けた人に対して何を説明すればいいのだろうか。

南相馬市に限らず内部消費の多い農家の方が比率が高い地域の場合、長期にわたって内部被曝の管理をしていくという方針はあってもいいだろう。(空間線量がはるかに高い場合はそれではすまないが。)この場合は事前に内部被曝をどの程度に抑えるという目標設定があり、その設定を達成しているかどうかを確認できる測定の設計があり、なおかつ数値が大きかった場合にどういう指導をするべきかという、総合的な方針が必要である。無料測定という「企業の善意」を生かすには地域の行政、病院の「交通整理」が重要になってくるはずである。
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by mihoko_nojiri | 2011-11-20 17:20 | 物理

誤差に迷う(0 プラスマイナス 0)

。。。下記は読んでも分かんない人は忘れてください。。。

先日あるかたから福島県のキノコをいただいた。キノコは時々大変大きな放射性物質が検出される食品で、最近やっている TC100S のレビューをかねて、その 1/3 くらいで放射線測定をすることにして, ベクミルに検体をもちこんではかってみた。検体をいれてぼんやり20分まった結果セシウムの検出は0だったのだけど誤差の表示がおかしい。セシウムが 0Bq で誤差が 0.05%??

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セシウム検出の原理はこうだ。検体のγ線スペクトルの中でセシウム領域の数(N)を数え、それから事前にはかってある空の時のバックグラウンド( N(BG)) と、カリウムのスピルオーバーの寄与 S(K) ) を引く。 その結果にをあらかじめ決めたカウント数からベクレルに換算する数をかける。要するに N- N(BG) - S(K) という引き算結果に数をかけているだけである。

誤差とはなんだろうか。今欲しい量は食品の中にはいっている放射性物質の量で、測定できる量はそこからランダムに崩壊してくるγ線の量である。無限に時間をかけて測定すればこの2つは比例関係にあるけれど、限られた時間の測定ではこの2つはおおまかにしか関係しない。それでも測定されたγ線の量は本当の値(真値)の推定を行うのに役にたつ。

カウント数が十分に多い時、誤差はカウント数の平方根になる。

セシウム領域にくるカウント数がN の時、放射性物質の量に比例する平均的なカウント数の値は N-√N と N+√Nの間に68% の確率で分布している。 N-2√N と N+2√Nの間には95% の確率で分布する。本当に興味がある値がどこにあるのかが確率でしか与えられないというのが放射線測定の基本である。

この場合直接的に測っている量はセシウム領域のカウント数とカリウム領域のカウント数だ。

時間 T はかった時のセシウム領域のカウント数 N(ROI) →  誤差 √N(ROI)
時間T はかった時のカリウム領域のカウント数 N(K)  →誤差 √N(K)

カリウム領域のカウント数に一定の数 f をかけたものが セシウム領域のカウント数になるので S(K)=f N(K) となる. このため

時間T はかった時のカリウムのセシウム領域の寄与 f N(K) →誤差 f √N(K)

となる。

N(BG)はサンプルより長時間はかることができるので誤差は無視することにする。引き算をすると N(CS) =N(ROI)-N(K) -N(BG) になるが、N(ROI) と N(K) はそれぞれ誤差がある。セシウム量が0と表示されるということは N(RO)-N(K)-N(BG)が0かそれ以下ということだが、この時誤差が0 であるはずがない。 N(ROI) 、N(K)それそれについて誤差があるのだから、 誤差はそのまま、あるいはむしろ大きくなるはずである。

統計学はとういう時の計算方法を教えてくれていて、誤差は √(ΔN(ROI)^2+ ΔN(K)^2) であり この場合は √( N(ROI) +f^2N(K))となっている。(難しい説明はこのエントリーの最後を参照)


測定グラフをみても、セシウム領域にはいっぱいカウントがあり、 N(ROI )N(K) も0ではない、当然引き算をしたあとでも誤差は Bq/Kg で0になるはずがない。 何を表示しているのかさっぱりわからないが300万円で販売されている機械が 0 +/- 0 と誤差として表示するというのは正直いって何かと思う。たまたま、私がいった時期にベルトルートの関係者の訪問があったらしく、LB2045 についてはベルトルート側でなんらかの改善がなされるらしい。

これはLB2045 だけの問題ではない。 福島の市民測定所の AT1320a でも 0 +/- 0 のオンパレードだ。( http://www.crms-jpn.com/mrdatafoodcat/food_grain.htm )  AT1320a の場合プリセットは I 131, Cs 134, 137, K40 の同時測定になっている。バックグラウンドは0ではなく、測定値に0の数字が出る以上バックグラウンドとの差し引きがあると考えられるが、常に誤差 は有限値(30分程度なら5Bq 程度?)のはずである。0pm 0 がでている以上 何かのまるめ操作が入っているが誤差の計算方法については輸入会社が販売会社に問い合わせても返事が来ない状態だと聞いた。

300万円代の食品測定器は最近行政、業者、市民測定所などで導入されているが、誤差の表示方法が誤っているのは問題である。放射線測定において測定中心値は本当の値ではなく、誤差とセットで初めて値に意味がある。このブログでは簡単な場合を説明したが、正しい誤差の計算方法は 文科省で例示されている。(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001us4f-att/2r9852000001us94.pdf)
これに準拠しない装置を業者が販売し、測定者にたいして対処方法を説明をしないのは問題だろう。食品の放射線測定器を販売する会社は最低限誤差表示がこれに準拠するものか公開するべきだし、間違った誤差を表示しているのであれば、正しい誤差を計算する方法を公開する責任があるはずだ。

# 追記 LB 2045 の場合は測定途中で小さい正の値になった場合にとても大きな誤差を出す(たとえば、 0.3269 Bq/Kg で誤差が 20955% など)ので、N(Cs) が負になったとたんに0 +/-0 になる仕様だと考えられる。 市民測定所のAT1320a の場合誤差表示が95% の信頼区間(つまり 誤差の2倍)で測定値がそれ以下の場合は測定所の方針で上限表示がとられる。それ以外に0+/-0 の場合があり、ヨウ素の場合は半分近くが 0+/-0 になっている。おそらくLB2045 と同じ表示方法だろう。またバックグラウンドの量はヨウ素領域のほうが多いはずなのに、ヨウ素の誤差とセシウムの誤差が有限値の場合、ヨウ素の誤差のほうが小さいというやや不思議な現象がおこっている。 いずれにしても0+/-0の丸め表示は、測定時の誤差の情報が落ちてしまうので不適切だと思われる。

2つの誤差の数を引く場合の数学的な説明(ガウス分布の場合)

 N(ROI) と S(K) の測定値を中心として、誤差を軸の長さとする楕円をかいてみよう。
 われわれに興味があるのは N(CS) = N(ROI)-S(K)-N(BG) で、図の中にこれが一定となる直線 (y=x+c の形)が点線でかいてある。楕円にぎりぎり接する線2本が中央値+誤差と中央値ー誤差に対応する。
つまりこの楕円に接する平行な点線の間に真の値がある確率が 68% になる。

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by mihoko_nojiri | 2011-11-20 14:31 | 物理

ニコ生のスライドあります。

昨日はご視聴どうもありがとうございました。

ニコ生 ニュートリノ http://live.nicovideo.jp/watch/lv65516003
で使った「ニュートリノミニマム」のスライドをおきました。

感想は後ほど。

# スライド誤植修正しました。
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by mihoko_nojiri | 2011-10-01 12:04 | 物理

科学と報道の間で (ニュートリノの速度と光の速度)

新しい実験データについての新聞・テレビ報道が研究者の間の「雰囲気」を伝えていないというのは、たしかにあることなのだけど、今回ばかりは少し乖離が大きすぎるような気がするので、久しぶりに素粒子物理の話をブログに書こうと思います。

OPERA は CERN から打ち出したニュートリノビームを、730km離れたイタリアのグランサッソという地下実験施設でで受け止める実験です。CERN から出るビームはミューオンニュートリノですが、ニュートリノ振動があるので長距離を飛ぶ間にタウニュートリノに変化し、これが測定器にあたる時にタウレプトンが出ます。この実験はそのタウレプトンを測ろうとするものです。主要な測定器はエマルジョン(写真乾板)という名古屋大学が長く手がけてきた装置で、日本の貢献が極めて大きいことでも知られています。

今回の発表はこのニュートリノ振動とは関係がなく、ニュートリノがグランサッソに到着する時間が、光速 c よりも早いという測定結果でした。結果のまとめをみるとニュートリノ速度 v と 光速とのずれが(v-c)/c = (2.48 ± 0.28 (stat.) ± 0.30 (sys.)) ×10-5. となるとされています。10万分の一程度のほんのわずかの違いです。

この実験データに対するコミュニティの反応は、少なくとも私の周辺では消極的なもので、ずれがおこった実験的な原因を探すことが重要であるととらえられています。実際、上述の測定結果では統計と系統誤差は十分押さえられていると主張されていますが、実験グループの結果の報告では最後に

Despite the large significance of the measurement reported here and the stability of the analysis, the potentially great impact of the result motivates the continuation of our studies in order to investigate possible still unknown systematic effects that could explain the observed anomaly. We deliberately do not attempt any theoretical or phenomenological interpretation of the results.

と、さらに系統誤差を調べる必要性をいうとともに、結果の理論的、現象論的解釈をしないと異例の断り書きをつけています。

また BBC の報道でも実験グループのメンバーである Antonio Ereditato が「可能な解釈を探したが見つけることができず、間違いも発見されなかったので、コミュニティにこの結果について議論して貰いたい。」さらに、

We want to be helped by the community in understanding our crazy result - because it is crazy”
「このおかしな結果を理解できるようにコミュニティの助けをお願いしたい。なぜならこの結果は気違いじみているからだ」 

と語ったようです。 Nature News によれば、CERN の中心的な研究者であった J. Ellis 発言として

Most troubling for OPERA is a separate analysis of a pulse of neutrinos from a nearby supernova known as 1987a. If the speeds seen by OPERA were achievable by all neutrinos, then the pulse from the supernova would have shown up years earlier than the exploding star's flash of light; instead, they arrived within hours of each other. "It's difficult to reconcile with what OPERA is seeing," Ellis says.

と 超新星 1987a の観測と OPERA の結果が矛盾する可能性を指摘しています。超新星 1987a というのは1987年」におこった超新星爆発現象で、このときに Kamiokande が超新星爆発からくるニュートリノととらえたことで有名です。超新星爆発では爆発のエネルギーの大半がニュートリノとして放出されますが、このときニュートリノがKamiokande で観測された時間が、超新星の光が観測された時間とほとんど変わず、また13個のニュートリノがほぼ同時に地球に届いたことから、ニュートリノの速度と光の速度の差に上限がついています。これは、今回の実験精度にくらべて遥かに小さくなっています。

重力理論を変更すると、大きな速度のずれが許される場合もあるという研究もあり、詳細が書かれたブログもあるようですが、そのブログの元となる論文の著者である Ellis 氏自体が上述の懐疑的なコメントをだしていることからわかるように、実験、理論ともに多くの人がこの結果にたいして大変慎重です。懐疑的な発言が多くなるのには、重力理論は宇宙の初期から現在にいたるまでの発展に関わる基本理論で、すでに多くの観測の結果によって支持されており大きな変更を行うことが難しいからでしょう。

昨日のCERN でのセミナーは私の周辺でも多くの人が見ていて、解析の問題点探しがすでに始まっていました。解析と実際との齟齬が起こりうる可能性があるのは、実データで制限されていない部分です。そのなかの一つにこの実験がCERN 周辺でのニュートリノの時間分布を測定していないという点が挙げられるようです。CERN 側では陽子ビームが加速器から取り出された時の時間情報をセンサーで電流に変換
して測定しています。この陽子ビームがターゲットに当たってパイオンをつくり、さらに崩壊してニュートリノができます。しかしどのようなニュートリノがCERN からでたかという直接的な情報がありません。CERN側で測定した陽子ビームの時間分布が、CERNから送り出したニュートリノビームの時間分布と等しいと仮定し、グランサッソで検出されたニュートリノ事象の時間分布と比較します。どちらの時間分布も、ビームの幅10.5マイクロ秒の矩形に近い形をしており、互いにどのくらい時間をずらせば、その両者の分布がちょうど重なるかを解析します。その際、CERN側の陽子ビームの矩形の立ち上がりの形と立下りの形、そしてそれが反映されるニュートリノビームの形を正確に知らないと、解析を間違えることになります。

さて、「コミュニティが理解を助ける」といっても、実験の詳細を知らないグループ外の研究者が実験の間違いを見つけるのは大変なことです。MINOS や T2K といった同じ長基線ニュートリノ実験もありますが、それぞれ実験条件や加速器の性能は異なります。新たな実験を設計するのであれば、OPERA 実験で系統誤差の原因となりうる要因が明らかになり、それを確実に克服できるセットアップが要求されるでしょう。当面は OPERA グループ内で、コミュニティからの意見を受けてされに詳細な解析が進められることを期待したいと思います。

いずれにしても、疑問に感じるのはい一部大手メディアの報道姿勢です。ネタとしての会話としてならともかく、「これが本当だとしたら、時間を逆に進むことができる」「アインシュタインの相対性理論を覆す」といった表現が使われ、実験自体が複雑な解析を要し、またその中でミスが入り込みうるという我々の共通認識が意図的に無視されているように感じます。しばらく報道合戦が続くのかもしれませんが、実験の内容や、研究者の受け止め方が伝わる報道をお願いしたいと思います。
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by mihoko_nojiri | 2011-09-24 23:01 | 物理

physics at LHC
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