油断するなここは戦場だ

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コライダー勉強会のホームページができました。

コライダー物理の勉強会のホームページが引っ越しました。

http://research.kek.jp/people/nojiri/collider.html

世話人のいない大学には積極的に広報しておりませんが、
強く参加を希望される方はKEK の野尻(nojiri at post kek jp)
までご連絡ください。
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by mihoko_nojiri | 2015-11-20 13:32

ROOT PyRoot problem with anaconda on Mac OSX 10.8 10.9 10.10 for CheckMATE

I tried to compile CheckMATE and I had run-time error.

Fatal Python error: PyThreadState_Get: no current thread

The problem comes from ROOT, and this is a memo what I did.

1. To compile ROOT with anaconda python and clang, on Mac 10.9 or 10.10,
where anaconda is either installed in home directory or though pyenv of Homebrew

ROOT can be complied, but it refers wrong library.
In ROOT lib directory, do as follows,

install_name_tool -change libpython2.7.dylib (my_anaconda_path)/lib/libpython2.7.dylib libPyROOT.so

(Thanks to Endo-sensei )


2. I also have Mac 10.8 running with gcc 4.7.1 downloaded from HPC.

For this one, I need to set LD (and? DYLD) path for anaconda lib
installed in home directry, otherwise anaconda python is referred
in some inconsistent manner.

To compile ROOT 5, I needed to disable cocoa and asimage.

--with-cc=gcc --with-cxx=g++ --with-ld=g++ --disable-cocoa --disable-asimage

Others work.
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by mihoko_nojiri | 2015-02-14 12:41

誤差に迷う Part 2 自費でホールボディカウンターを受ける人のために

前にも書いたことだけど大事なことだからもう一度書く。

首都圏にも ホールボディカウンター(WBC  体の中に入っている放射性物質を測る測定器)の測定をやるところがでてきているのだけどWBC を受けた人が、その結果をどう理解するかという問題だ。

WBC 測定で福島県内で始まってからたくさん相談をうけてきた。福島県内の測定は測定値を理解する以前に、想定されてない高いバックグラウンドのせいで値自体がややおかしい、という結論になりつつある。首都圏だとバックグラウンドは少ないから、測定値についての問題点は福島県内のものよりかなり少ないとは思う。でも測定を受けた人に測定結果がわかりにくいっていう問題は、少なからずあるような気がするのだ。

放射線測定では含まれてる放射性物質が0だとしても0じゃない値が出る時は結構ある。体に入ってる放射性物質の量が0に近いときにどんな値が出るかを表すのが測定誤差だ。例えば 1 sigma に対応する誤差が5の時、まったく放射性物質の入ってないものを100回はかったら 2回、3回と10 を越える
値がでても不思議じゃない。放射線測定は0であることは証明できないけど、これはまず間違いなくなんか入ってるだろうという値は誤差の3倍でこれを「検出限界」という。此れ以下は「不検出」というのが普通だ。(注意:AT1316 は3倍の代わりに2倍ーー95% 信頼区間以下を不検出と呼んでいるかもしれない)

だからWBC を受けにいくにいく人は、まずは、自分の受ける測定が、自分の計りたい精度に達しているかどうかまず知ってからいこう。例えば 品川のWBC が測定できるところでは AT1316 という機種を使っていて3分測定で検出限界が300Bq。これを被験者の体重で割ると Kg あたりの検出限界がでる。体重が 60 Kg だったら 5Bq/Kg 、20Kg の子供であれば15Bq/Kg が検出限界だ。これ以下の数字だったら、ほんとは0である可能性だってある。

次に大事なのはこれ以上だったら自分が心配するという目安量をまず決めておいて、検出限界がこれより十分下だ、ということを確認することだ。目安はいくらにすればいいだろうか。10歳の子供が毎日10Bq 食べると、長期的には体全体にセシウムが 500Bq ぐらいたまる。10歳の子供の体重は平均30 Kg だから これは、20Bq/Kg に対応する。これが一年間でどのくらいの内部被曝になるか ICRP の基準で計算すると一年でだいたい50μSv になる。他の年齢でどういうことになるかは田崎先生のブログに計算方法がかいてあるから、勉強してみたらどうだろうか。

http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/housha/details/CsInBody.html#2)

検出限界より大きい測定値がでたとき、もう一つ注意しておくべきことがある。それは Cs137 と Cs 134 の比率だ。この比率は震災直後は 1:1 だったけどCs 134 は2年で半分になるから、今はたいたい 1:0.8 だ。自分が受けた結果がこの比率と全然違っていたら、貰った紙にかいてある誤差がいくつになっていても、その測定は何か間違ったことをやっているか、誤差の評価が違っていて実は測定精度は十分じゃない。そういうときは、スペクトルをみてもう少しきちんと考えないといけないのだ。

最後WBC 測定をしている人たちにお願いがある。それは測定結果をなるべく丁寧に説明してあげてほしいということだ。「とても少ないです」といわれても現実にそこに0でない数字があって、誤差の意味もはっきりわからないと不安になる人は多い。0 でも数字が出るってすぐに納得できる人はとても限られている。お金をとって測ってるなら、測定値の説明するのは測る側の責任だと思う。

空間線量の高い福島県内では、WBC はまだまだ実験的な段階で、測定を最適化していかないといけない。体からでている放射線の量を体の中のセシウム量になおす部分にまだまだ問題があるから、測定情報、とくに被験者の測定結果を情報公開して、外部からフィードバックが入ることが重要だ。

多くの測定装置ではスペクトルの形からセシウム量を評価する方法を固定して、推定されたカウント数の誤差(統計誤差)だけを表示している。でも、そもそも測定の誤差は、汚染のないものを多数はかって測定値の分布を出して、系統誤差(統計誤差以外の不定性)も含めた誤差を評価するのが本来のやり方だ。。測定値のND (不検出)周辺の分布は測定器の本当の誤差を知る上で重要で、その分布は被験者に公開されるべきだろう。放射線の測定は系統誤差を含めて誤差と測定値がそろって始めて意味があるのだから、
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by mihoko_nojiri | 2012-02-02 18:07

食品中の放射線の精密測定(やさしおクッキング篇&仕様書作成篇)

最近食品の放射線測定器について質問を受けることが多くなってきましたが、なかなか自分で触ったことがない測定器についていうのは難しいです。このブログではベクミルで触ったLB2045 についてかくことが多いですが、同等またはそれ以上の機種はいろいろなメーカーから出ています。以下に早野先生からいただいた同じ程度の測定能力を持った機種の表を挙げます。これ以外にもまだまだあるようですので、最後にリンクをまとめました。(同程度の機種-NaI 2インチ以上をご存知の方はおしらせください。特定の機種を推奨するものではありません。

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精密な検査ができる検査機関に出す前に自分のところの商品や食品を検査したいという方が増えているようですが、特にスペクトルメーターの場合には、ソフト面でいろいろな機能が付随してきます。このエントリーでは特に食品に含まれるカリウムからの寄与の差し引きについて説明します。

一つ前のエントリーで紹介したように、γ線が測定器に入ったときにエネルギーが実際よりも低くカウントされる場合がどうしてもでます。Cs 137, 134 の量を測る場合に問題になるのは、それよりエネルギーが高いγ線を出し食品の中に普遍的にあるK40 の寄与になります。

やさしおという 塩化ナトリウム(食塩)を塩化カリウムに置き換えた商品があります。このやさしおにはカリウムがたくさんはいっていて、これをLB2045 で測定するとK40 の元気なピークが出ます。下の図はLB2045 でK40(図では 1400-1510に設定 右) とセシウム領域(450-850keVに設定 左)を同時測定した図です(LB2045にはK40 がプリセットされていないので手入力しないといけません。)もちろん「やさしお」にセシウムは入っていないのですが、570cps の誤検出をしてしまっています。一方でK40 ピークが出る領域には 513 カウントでています。食品を測定した時にカリウムが入っていると、カリウムのピークの場所に出ているよりたくさんの量がセシウムのエネルギー領域にでてしまうわけです。

d0164049_23472568.jpg


LB2045 の場合はカリウム領域に出たカウント数をもとに、セシウム領域のカリウム分を差っ引く機能がついています。具体的にはカリウム領域の数に 1.1 をかけてセシウム領域のカウント数から引けばいいわけです。これを、スピルオーバコレクションといいます。下の写真はその設定をした後の測定ですが、見事にセシウム領域が0と矛盾ない値になっています。(誤差が253%であることに注意。)

d0164049_23504994.jpg



この設定をするために一週間前にベクミルに早野先生といったのですが、持っていった食品にカリウムの高いものがなく早野先生は大変不満そうで、カリウムが引けるようになったんだから、食品で試したいというので、(わがまま)牛乳にやさしおを足したり、バナナを買いに走ったりしました。特に牛乳はいくらやさしおを足しても線量が上がらず、きれいに引けていましたし、バナナもカリウムは4Bq/kg で、セシウムは0とでました。

K40 の差し引きは純粋にソフト的な問題です。一旦スペクトルが数値データ化できれば、原理さえわかれば自分でも処理できます。それでも、だいたい正しいことが、ボタン一つでできるのは便利です。食品からでるカリウムは普通は数Bq/Kg 程度と思いますので、小さい誤差は気にしないという方は、金額でえらんでもいいと思いますが、業者に機器付随のソフトや、日本語マニュアルの充実度(LB2045 の場合は現在英語マニュアルの spill over collection の部分を熟読する必要があります)などを聞いてみるのもいいかもしれません。

追記(同程度の製品をご存知の方はお知らせください。)

#業者サイト(順不同)

ベルトルード LB2045 http://www.berthold-jp.com/products/isotope/foodplant.html

EMF211型ガンマ線スペクトロメータ(リンク先の詳細な資料あり) http://www.emf-japan.com/emf/emf1/emf211.html

関谷理化 CAPTUS-3000 http://www.sekiyarika.com/labo-ware/chemical-apparatus/products/captus3000/captus3000.html

日立アロカ CAN-OSP-NAI http://www.techno-ap.com/
ガンマデータ・インスツルメント GDMシリーズ(リンク先に詳細資料あり) http://www.jemsci.co.jp/products/nai/

テクノエーピー TS100B, TS150B http://www.techno-ap.com/
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by mihoko_nojiri | 2011-10-09 23:54

食品中の放射線の精密測定(基本篇)

611 GCM のときに一般向の講演で放射線のエネルギースペクトルをみせて会場全体が引いてしまい、菊池さんに「無理だよ、無理だと思った」と軽くいなされましたが、今日はスペクトルを詳しくみたいのです。目的はK40の効果の差し引きですが、エントリーが長くなるので2つに分けます。

d0164049_19491947.jpg


上の図は食品測定器LB2045 でチェッキングソースでのセシウム 137 のエネルギー分布です。横軸は測定器で測られたエネルギー、縦軸はそのエネルギーに対応するカウント数です。山が高いほど対応するエネルギーをもつ事象数が多いということになります。一番右にあるのがセシウムのピークですが、ピークより下にもたくさん分布していることがわかります。このゴミはコンプトン端(こんぷとんたん)と後方散乱ピークといわれるものです。

セシウム137のスペクトルですから測定器に入ってくるγ線は決まったエネルギーをもっています。これが測定器に入るといろいろな反応がおこります。これを下の図にまとめました。

d0164049_19371262.jpg


1)光電効果(左): 光電効果ではガンマ線のエネルギーが総て電子のエネルギーになります。電子のエネルギーは測定器の中でより低いエネルギーの光にかわり、光電増倍管に集められて決まったエネルギーの信号になります。

2) コンプトン散乱(中): コンプトン散乱では一つのγ線の散乱で、エネルギーを持った電子と光が出ます。電子のエネルギーは測定器ではかることができますが、光は逃げていきます。この場合エネルギーは部分的にしかはかれません。光電効果のピークよりエネルギーが低いところに、エネルギーが分布します。上限が決まっていて、コンプトン端といいます。

3) コンプトン散乱+光電効果(右): 測定器の大きさが十分に大きい場合、コンプトン散乱で放出された光がまた光電効果を起こす事があります。この場合結果的に総てのエネルギーが信号になります。この反応がおこるためには結晶が十分大きい必要があります。小さい結晶ではこの反応はほとんどありません。

例としてTA100 にもつかわれている CdTe 結晶のエネルギー分布をLB2045 のスペクトルと比べてみましょう(下の図、元リンクはこちら http://www.acrorad.co.jp/detect_4.html 4x4x1mm 結晶)ここではピークの高さをあわせてありますが、 NaI の方が正しいエネルギーの位置にくる事象数が倍程度多いことがわかります。コンプトン散乱が多ければそれ以下のピークは大きなバックグラウンドと戦うことになりますが、結晶が大きいために半分に抑えられていることがわかります。相対的に4倍のゲインになります。 また、CdTe の場合原理的に大きい結晶が難しいのですが、NaI 結晶の場合は大きな結晶を作ることが可能です。航空機調査に使われる NaI 結晶は低線量率用で総重量が80kg結晶サイズ゙4"×4"×16"のものが4本と一つの結晶の大きさがLB2045 の30倍程度の大きさのものを使っています。原理的には結晶が大きいほどγ線エネルギーも正しく測定できることになります。

d0164049_19441021.jpg


もう一つ注意するべきことは、スペクトルに山があるからといってそれに対応する原子核があるわけではないということです。最初の図で低いところにあるピークは測定器の外でコンプトン散乱をし、反射して入るγ線の寄与です。これを後方散乱ピークといいます。エネルギー精度が高くないNa I 結晶の場合これを別の放射性物質と見間違えないようにすることが大事です。

(カリウム測定篇に続く)

[参考]
 
より詳しい解説 
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_No=08-01-02-03

光電効果、コンプトン散乱などの散乱断面積(鉛の場合) http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/08/08010203/06.gif

物質に入ったγ線の挙動

http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/08/08010203/07.gif

追記 TA100 のスペクトル応答はここに出ているものと違うというご指摘をいただきました。ここに実際の製品でCs 137 線源での応答がありますので、参考になれば幸いです。(他の線源についての測定図多数) http://www.mikage.to/radiation/technoap_ta100.html

追記 TA100 って食品はかれるんですかという質問をいただいたので、牧野先生の「TA100 で食品をはかろう篇」(がんばれー)をご紹介(結論からいうととっても大変。)  リンク1 リンク2
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by mihoko_nojiri | 2011-10-09 19:52

とくダネの給食番組について

先日フジのとくダネである学校給食センターで、食品の納品段階で放射性物質をはかる取り組みを紹介していたとききました。空間放射線量が 28cpm のときに食品にALOCA の線量計をあてて3倍程度であれば使わないということだったと聞いています。これはあまり意味のある取り組みと思えないので、そのことについて説明したいと思います。

食品の測定の場合一番大事なことは、遮蔽、つまり外からくる放射線を遮断して、食品からの線量だけを測定することです。

これは以前に早野先生がだしておられた食品中にセシウムが入っている時の放射線量ですが、現在の暫定基準いっぱい500Bq/Kg だとして表面線量で最大0.03μSv程度しかないとわかります(http://twitpic.com/5oamfb) 実際には LB2045 のように食品検査装置にいれて測る時は、量が少ないため線量はさらに小さくなります。


空間線量が食品の出す放射線より十分多い場合、遮蔽が必要になります。

しばらく前のエントリーでウラン系の放射性物質がたくさん入っている肥料の話をしましたが、この肥料に宇都宮さんのガイガーを密着して30.2cpm、一方で 空間からの放射線量は 19.3cpm. でした。これは400 カウント程度の背景放射線で測っているので誤差は 5% 程度と明らかに有意な差があります。

食品の場合は基準値程度の食品では放射性物質が少なく、さらに食品が空間からの放射線を遮蔽する効果があるために、空間線量が多い場所では測定そのものができなくなってしまいます。

例として同じガイガーでワカメのK40をはかろうとした時は( http://twilog.org/Mihoko_Nojiri/date-110824)ワカメで測定器を覆ったのでは、線量は増えるどころか、かえって下がってしまいました。

こういう時は遮蔽の出番です。線量計を鍋にいれると空間線量から30% ほどカウント数が下がります。20分ほど空で測って288 カウント、ワカメと一緒に測ると312 カウントになります。これで誤差が 17 くらいですから、やや多いと言えるかもという程度です。いわゆる検出限界は誤差の3倍ですから、検出するにはさらに4倍程度の時間をかけてはからなければなりません。

簡単にいえば食品の線量を測るには、その食品の遮蔽効果を上回る量の放射性物質が入っていることが必要だ、ということになります。LB200, LB2045 のような食品の測定装置に1.5cm から5cmの鉛の遮蔽がついているのは、空間線量を十分に下げることで食品から出る放射線を際立たせることが目的です。

なぜ線量計を当てるだけの検査が給食センターに導入されのかわかりませんが、効果はほとんどないでしょう。ヨウ素が多かったころの対策かもしれませんが、マニュアルを過信するのではなく、状況の変化に応じた対策をして欲しいと思います。給食センターに独自のベクレルモニターを導入するのは良い対策のように思います。またこのような取り組みが何か効果があるかのようにテレビで取り上げられたことについても、テレビ局の勉強不足なのではないかと思います。
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by mihoko_nojiri | 2011-10-02 17:50

ニコ生でニュートリノ(ニコ生風科学番組のすすめ)

9月30日にニュートリノの件で素粒子物理のことで初めてニコニコ生放送に出ました。以前一度GCM 611 にでたこともあるのですが、あの時は予定を極端に越える観客がいて、放送の方は意識していませんでした。

今回は観客のいないスタジオで尾関さん、阪大の菊池さん、SF 作家の野尻抱介さんと一緒に出ました。台本がきたのが前日で、それから昨日公開したスライドをつくりました。当日の打ち合わせではタイムマシンについての解説の要望が多いのではないか、尾関さんがこうだったらこうなるのではないかと案をだされるのが、全く頭にはいらず、まあ適当だね、ということで時間切れになりました。放送中そこはグダグダだったと思います。ただ今回のように、新聞テレビですと紙面や放送に乗るときに全くニュアンスが変わってしまうような「危険な話題」の時には、あえてグダグダを選択するのがいいと思いました。光速より早い粒子があって、他の粒子は光速以下であるという模型を理論的に構築するのは難しいのです。例えば放送中に一つニュートリノが光速より早くなる模型をご紹介しましたが、実はその模型では理論はnull energy condition という大事な条件を破っていることが示されています。もと論文はこちらになります→( http://arxiv.org/abs/1109.5687)

ニコ生の放送スタジオでは目の前に大きなテレビがあって、コメントが画面の上に表示されます。コメント機能の良さを纏めると

1) 視聴者の反応が分かる
2) 視聴者同士で今の話の値付けができる(みんなはわかっているか、重要な話か)
3) 解説になっている
4) グダグダになってもコメントがおもしろい

ではなかろうかと思います。

4人でやっていたので、他の人がしゃべっている時は気持ちの余裕もあり、コメントでリアルタイムで視聴者の反応をみることができるのはありがたいことでした。普通の講演会より双方向で良かったと思います。朝カルなどの講演会の時はみなさんまじめに聞いていて、講演の内容量が多い(これは私の問題かもしれません)どうしても時間がおします。ニコ生のコメントは何かいうと一瞬で反応が流れるというのはテレパシーみたいで悪くない感じです。ニュートリノの説明は長すぎたのではないかと思いましたが、みなさんついてきて頂いているようで安心しました。あと尾関さんや菊池先生が素晴らしくて、わかりにくそうな言葉に間髪いれず突っこんでいただけます。長く一般向けのサイエンスコミュニケーションをされている蓄積だと思いました。ニコ生のコメント自体も、一種の解説のような働きをしていて、通りが悪い言葉を言ってしまうとすかさず解説をいれてくださる方がいたようでした。野尻SF先生がバナナに爪楊枝刺すのはどうかと思いましたが、視聴者の盛り上がりは良かったです。

今回ニコ生の視聴者数が3万強ということでした。こういう固い内容にしては異例だということでした。

3万というのはテレビで成り立つにはおそらくかなり少なく、科学雑誌の売り上げに部数と比べると良い数です。ニュース報道からすぐ放送に持っていったことが高視聴数にむすびついたのでしょう。チャンネル数が決まっていないUST の、雑誌やテレビにない強みが発揮されたのだと思いました。客層が若いこととをディレクターの方が心配されていましたが、科学技術に詳しいインターネットユーザーも相当数いるようです。

打ち上げの時スタッフの方と話したのですが、今後もニコ生で同様な試みをしていただける余地はあるのではないかと思いました。時間に余裕がとれるので、内容や研究の雰囲気も伝わるのではないかと思いますので、研究者の方、また研究機関等でも、ネットワーク放送からの依頼を真剣に検討していただく価値はあるのではないかと思います。

有料会員にならないといけないようですが、タイムシフト視聴があるようです。  http://bit.ly/o9sWeG 

# あれこれつっこみが入っているところ。
 
d0164049_930186.jpg

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by mihoko_nojiri | 2011-10-02 08:29

土は新宿副都心?(ベクミルで肥料も測ってみる)

ベクミルの利用者の中には土や肥料の測定をしたいという方もいらっしゃるのではないかと思います。汚泥や腐葉土を原料とする肥料はセシウムを含んでいる可能性があることは以前のエントリーでも説明しました。こういう物をを汚染されていない土に混ぜ込みたくないというのは当然のことだと思います。

土の測定は農家の方にとってはより切実かもしれません。食品の中に出る放射性物質の量(Bq/Kg) をと土の放射性物質の量(Bq/Kg) の比率を移行係数といいます。特殊な作物(例えば野生のキノコなど)以外はこの移行係数は 1よりかなり小さいことが知られています。つまり、土の放射性物質を測る方が、 食品の中のわずかな放射性物質をはかるより簡単だということです。また、実際に土の汚染度をみて、植える作物を選ぶということも可能になります。

しかしこの場合も注意するべきことがあります。畑には肥料を使いますか、肥料の中にリン鉱石を原料としているものがあります。このリン鉱石のなかには天然のウラン系列の放射性物質を微量に含んでいるものがあります。植物のなかに移行しませんから、生産上の問題はないのですが、土を測定の際にこの放射性物質の存在がやっかいなものになります。また Kのおおい肥料ではK40 も含まれます。これもセシウムを同定する上でじゃまになります。


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上の写真はかつてフォロワーの方から線量が高めなので、と送っていただいた化成肥料のスペクトルです。低いほう(左側)ににぎやかにピークが乱立していてまるで新宿副都心のようです。原子炉由来の Cs の3つのピークは見えていないのでセシウムでないことがわかりますが LB2045 ではこの肥料に 400Bq/kg のセシウムが入っていると判定してしまいました。



[灰色の字でかいた部分は難しいからとばしていいです(><) ]

550 keV ~800 keV 程度のセシウム領域にでているのは Bi(ビスマス) 214 の山です。また高いエネルギー側のピークや構造はK40 のγ線やその散乱で叩き出される電子のエネルギー分布です。(K40 コンプトン端がみえています。) Pb(鉛) 214 のラインスペクトル 295keV (18% )352keV(34%) も検出されています。 これと似たエネルギーをもつものに I(ヨウ素) 131 の284keV , 365keV のラインがあります。しかしヨウ素であれば365keV が 80%, 284keV はわずかに6.1 %と、2つの山の高さに大きな差が出るはずですから、この写真に出ている山はヨウ素ではないと判定できます。Pb214 がごく微量の場合に片方がたまたまみえなかったりすると, このようなNaI の測定器ではではヨウ素と誤認してしまう場合があります。(例 http://www.city.kawasaki.jp/80/80syomu/home/urgency/houshanousui_20110517.html ) またそのさらに下には Pb-212 の 238keV とPb-214 の242keV が重なっています。


化成肥料が過去に施肥されたことのない畑というのはあまりないのではないかと思います。畑の土をはかるとこのようににぎやかな検出線をだしてしまったり、ほかよりわずかに線量が高かったりすることがあるかもしれません。スペクトルを表示すればセシウムでないことはすぐに分かりますが、スペクトルを表示しない場合や、LB 200 のようにそもそもスペクトルを出す機能がない測定器では誤認の原因になりかねません。できれば LB2045 を使い、後で確認するためにも、 上の絵のようなスペクトル画像を保存しておくことをおすすめしたいとおもいます。
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by mihoko_nojiri | 2011-09-27 21:19

走り出す人 III (ベクミルで食品測定)

先週 twitter で知り合いになった東葛ガイガー会の方といっしょに柏のベクミルにいって食品、土などを測ってみました。

ベクミルは時間料金で食品や土壌の放射線測定が自分でできる測定所です。10月11日にオープンの予定でベクレルモニターLB200(4台)と上位機種 LB2045(4台) があります。 LB200, LB2045 については、何度もTL で話題に上っていますが実際にみるのは初めてでした。

LB2045 は5cm の鉛の遮蔽と 直径5cm のNaI が付属した食品測定器です。鉛の容器の中に食品をいれるプラスチックのケースがぴったりはまり、さらに食品の中に放射線測定装置がきちんとはまるようになっています。厚い鉛の遮蔽で外部からの放射線を遮蔽することで、環境からの放射線を遮蔽して、短時間で測定を行うことができます。



d0164049_21581297.jpg


NaI 結晶はγ線が測定器に入って反応を起こすと光をだします。結晶が十分に大きければこのγ線のエネルギーをほとんど全部吸収してエネルギーを測定することが可能です。Cs 137 や Cs 134 からくる放射線は決まったエネルギーをもっているので、γ線のエネルギーの分布に立つ山をみることによって放射線を測ることができるのです。これも結晶が大きいほど有利です。写真はCs137 の線源を測定器のあてた時のエネルギー分布で、きれいな高い山が見えるのがわかります。
d0164049_2151853.jpg






<<細かい話>>

この山の下に相当な数のγ線があります。ここで512 以下のところにある山はγ線が電子にエネルギーを与えて飛去ったときのβ線(電子)のエネルギーが測定されたものです。コンプトン散乱と呼ばれるものです。さらに256keVの下に一山ありますが、これはγ線の後方散乱ピークです。この点については長くなりますので、また次の機会に説明したいと思いますが、大事なことはどのような放射性物質の測定でもこのような構造は観測されるということです。つまり興味ある領域より高いエネルギーのγ線をだす放射性物質はセシウムを探す上で障害になります。(天然にあるカリウムの同位体 K40 など)



食品がセシウムで汚染されていると Cs 134 の山が2つと 137 の山が一つ、全部で3つの山が見えるはずです。実際には食品に入っている放射性物質はわずかです。福島産の椎茸、コンビニで買った那須高原牛乳などはかなり長時間ははかったのですが、表示は 数Bq/Kgから 0 Bq/kg をいったりきたりするだけででした。福島、那須など、消費者が神経質になりそうな地名がはいった食品の中に放射性物質が入っていないというのは、みなさん意外に思うかもしれません。この時のスペクトルは下の写真のような感じで、セシウムのある場所には何も見当たらないことがわかります。
d0164049_2222894.jpg



食品の中に放射性物質が入っているときはどのようにみえるでしょうか。Cs 137 のγ線のエネルギーは 662 keV 一方 Cs 134 は主なものは2本あって 605keV(97.6%) と 796keV (85%) です。(Cs 134 は一個の崩壊で普通2個のγ線をだします。ここで% は一個の崩壊から特定のエネルギーのγ線がでる確率をあらわします。Cs 134 はこのほかに  802keV (8.69%)などもあります。)  今はCs 134 と137 はほぼ同じBq 数であるといろいろな場所で報告されていますので、見えるのであればこの3つがすべて見えなければなりません。 セシウム量がほぼ 0, 75Bq/kg程度、 162Bq/Kg の表示がでたサンプルを上中下に並べてみます。いずれも 15分程度の測定で得られた分布ですが、最後のサンプルにはかなりしっかりした山が三つ見えているのがわかります。

d0164049_2232726.jpg



LB2045 を使うときには何ベクレル検出したという表示の他に、この[スペクトルの山]を確認されることをおすすめしたいと思います。カリウムのおおい食品の場合、バックグラウンドと食品測定の差をとるだけでは、Cs 134, 137 のγ線がくる場所にK40 の散乱から入ってくるγ線をシグナルであると勘違いしてしまう可能性があります。ただし、早野先生によるとLB2045 はK40 由来のバックグラウンドを引く機能もついているそうなので、理解がすすめば、K40 の量から引く操作をすることも可能になるかもしれません。それでもこの山を確認するのが測定の基本です。

(土壌測定篇につづく)
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by mihoko_nojiri | 2011-09-26 22:08

走り出す人 (ガイガーカウンター製作ワークショップat円盤)

しばらく前に筑波大学の「バイオ e-カフェ」で、「デマを信じる心理について考える」という企画の講師をした。

グループ別にテーブルディスカッションをしていただいたあとで、自分がどんなデマを信じたか、という発表をしている最中に一人の方が、「今回の震災は人工的に引き起こされた地震だ」というデマを信じたという話をされた。これには驚いて、どうしてですか、と聞くと「津波がくるのをテレビでずっとみていて、あり得ないことが起こったと思った、そしてこれだけあり得ないことが起こるのなら、何が起こっても不思議ではないような気がした」、とおっしゃったのである。

会場にいた人に「津波画像をテレビでみたか」と聞くとほとんどの人が見たといい、感想を聞くと「何かしなければいけないと思った」「すごく落ち込んだ」「不安になった」「とても興奮した」。。と様々ながら、みな強い影響を受けたことが感じられた。ホワイトボードの中心に、「津波という事象」を置き、それを中心にして人の気持ちを「事象を中心とする動線」として配置すると、震災をきっかけにばらばらになって飛び散る人間社会が見えるような気がした。思考の中心が大きく動くと、大きな運動が生じ、別の落ち着き先が見つかるまで動き続けることになる。その動線を意識することで、何かの「再配置」のきっかけが掴めるのではないか、と思ったりしたのである。

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自分自身も、自宅をと研究所と往復するだけの研究者生活から、放射線について考えたり、ライブスペースにいって講演したり、漫画のネタになったりと、どこに向かっているのか良くわからない生活になってしまった事もあり、震災をきっかけに走り出した人には興味がある。

宇都宮さんも震災をきっかけにしてある方向に「走っている」方だ。本業は音楽アーティストだが、8月からガイガーカウンター製作ワークショップを大阪、東京で主催されている。(http://utsunomia.com/y.utsunomia/japanese.html ) 6月に素晴らしいガイガー管解体画像がネット上に流れていたので、パチって 611GCM の修正スライドに掲載したのだが、これが宇都宮さんのサイトの画像であった。慌てたフォロワーの方に「これあの宇都宮さんですよ!(汗)」というだめ押しとともに元サイトを教えていただいた。それをきっかけに宇都宮さんと幾度かやりとりがあり、先週ついに彼のワークショップに潜りこんで、自作ガイガーを一台手にいれることと
なったのである。

薄暗い「円盤」というスペースで--こういうのをどういう場所というのだろうか、壁一面に知らないアーティストのCD が並べられている--ガイガーを組むのがイベントの前半だ。分解された「写ルンです」の基盤からガイガーに電圧が供給され、万歩計がカウンターに化け、イヤホンからカリカリ音が出たりして、何かの魔法なのではないかという気すらすす。もたもたと「人生最初のハンダ付け」をして、鈍く金属光沢のガイガーをセットしてスイッチを入れると、カウンターが放射線が管に入った音をポツリポツリと数字を拾い始める。 SBM 20 という RADEX や SOEKS 01M に入っているガイガー管である。

ワークショップメインは自作したガイガーを使った測定講習である。宇都宮さんは「定カウント測定」をすすめている。ガイガーカウンターは測定器が鳴った回数を計数する装置であるが、定カウント測定ではあらかじめ決めたカウント値に達するまでに経過した時間を記録するのである。

この計測方法を勧めるのには理由がある。

SBM20 ではガイガー管の計数は1μSv/h が 100カウント/cpm 程度である。 (cpm は一分あたりのカウント数の意味) 0.1 μSv/h ではたったの10カウントだ。。この値は平均値で、一回一回の測定値はふらつく、このふらつきはカウント数の平方根程度である。 10000カウントであれば、100, つまり統計的な誤差は 1% であり100 であれば 10%, 10 の時は(ちょっと不正確なんだけど)3くらいだ。

ガイガーカウンターは普通一定時間はかった結果を表示するように設計されている。つまり一分計測であれば 100cpm で1.00μSv/h と表示する。しかし、本当の平均値はこの表示とは異なっている。 1μSv と表示されたときに、本当の平均値の値は0.9~1.1 の間にある確率が 68% と、大変おおらかな広がりをもつのである。これが、10 cpm ならどうだろう?平均が 0.1 である確率がもっとも高いが、実は 0.07 でも 0.13 でも全然不思議はない。これが、測るたびに値が毎回2倍くらい変わる、まだ福島第一から放射線が出ているのかといった、ガイガーカウンターをもっている人にありがちな誤解の原因になっている。

宇都宮さんの勧めるガイガーカウンターの使い方はこうだ。ストップウオッチを稼働させる時の積算カウント数を記録しておき、それ以後のカウント数がある値を越えたときにストップウオッチを止める。そしてcpm を出すために割り算をする。例えば 30分はかって 1000 カウント増えたとすると、期待されるふらつきは32 くらい、つまり誤差は 3% になる。一分あたりのカウント数は1000/30=33.3 誤差は 1.1 だ。このくらいカウント数があれば、誤差は気にならないレベルといってもいいだろう。

今市場にあるガイガーカウンターに長時間平均の機能があるのものはほとんどない。同じ SBM 20 でできているガイガーカウンターはRadex で2分程度、 SOEKS に至っては20秒積分だが、それぞれ 0.2Sv/h の読みの時には 40, 7 などといったカウント数でSv/h の数字をだしているということを意識して使うべきだろう。このような測定器で独立の測定を何回か繰り返して平均を取るのは、宇都宮さんの測定方法でいうとストップウオッチを何度か止めて途中の数を確認するのに対応する。測定の2桁め数字も気にするのであれば最低でも100カウントに対応する時間 、つまり 100 cpm ÷(平均のμSv) 分程度、2桁めの数字の変動が気になるのであれば、さらにその3倍程度の総カウントをだす測定時間が必要だろう。

これだけのことをいうためだけであれば、ガイガーカウンターの自作は必要ないと思う人もいるかもしれない。実際、規程時間内に製作を終えるための材料の吟味、よく整備された製作マニュアルをみると、ここ数ヶ月の宇都宮さんの時間がほとんどこのワークショップのために注がれているのが分かる。自作にこだわる背景に、「自作のプロセスから『放射線そのもの』に向かう気持ちが養なえる」というお気持ちがあるのだと思う。与えられた装置のボタンを押してその数字を信じるだけでは、気持ちは「数字の悪魔」に振り回される。しかし、測ることは始まりであって、本当に大事なことはその数字から何を判断してどうするか、という動線にあるのだと思う。

放射線の健康への影響、内部被曝の捉え方については、私と宇都宮さんではかなりのずれがあった。残念ながらワークッショップではそのあたりを十分話す時間がなかったので、またお話をする機会があることを願っている。
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by mihoko_nojiri | 2011-08-30 19:29

physics at LHC
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