油断するなここは戦場だ

誤差に迷う(0 プラスマイナス 0)

。。。下記は読んでも分かんない人は忘れてください。。。

先日あるかたから福島県のキノコをいただいた。キノコは時々大変大きな放射性物質が検出される食品で、最近やっている TC100S のレビューをかねて、その 1/3 くらいで放射線測定をすることにして, ベクミルに検体をもちこんではかってみた。検体をいれてぼんやり20分まった結果セシウムの検出は0だったのだけど誤差の表示がおかしい。セシウムが 0Bq で誤差が 0.05%??

d0164049_1452827.jpg


セシウム検出の原理はこうだ。検体のγ線スペクトルの中でセシウム領域の数(N)を数え、それから事前にはかってある空の時のバックグラウンド( N(BG)) と、カリウムのスピルオーバーの寄与 S(K) ) を引く。 その結果にをあらかじめ決めたカウント数からベクレルに換算する数をかける。要するに N- N(BG) - S(K) という引き算結果に数をかけているだけである。

誤差とはなんだろうか。今欲しい量は食品の中にはいっている放射性物質の量で、測定できる量はそこからランダムに崩壊してくるγ線の量である。無限に時間をかけて測定すればこの2つは比例関係にあるけれど、限られた時間の測定ではこの2つはおおまかにしか関係しない。それでも測定されたγ線の量は本当の値(真値)の推定を行うのに役にたつ。

カウント数が十分に多い時、誤差はカウント数の平方根になる。

セシウム領域にくるカウント数がN の時、放射性物質の量に比例する平均的なカウント数の値は N-√N と N+√Nの間に68% の確率で分布している。 N-2√N と N+2√Nの間には95% の確率で分布する。本当に興味がある値がどこにあるのかが確率でしか与えられないというのが放射線測定の基本である。

この場合直接的に測っている量はセシウム領域のカウント数とカリウム領域のカウント数だ。

時間 T はかった時のセシウム領域のカウント数 N(ROI) →  誤差 √N(ROI)
時間T はかった時のカリウム領域のカウント数 N(K)  →誤差 √N(K)

カリウム領域のカウント数に一定の数 f をかけたものが セシウム領域のカウント数になるので S(K)=f N(K) となる. このため

時間T はかった時のカリウムのセシウム領域の寄与 f N(K) →誤差 f √N(K)

となる。

N(BG)はサンプルより長時間はかることができるので誤差は無視することにする。引き算をすると N(CS) =N(ROI)-N(K) -N(BG) になるが、N(ROI) と N(K) はそれぞれ誤差がある。セシウム量が0と表示されるということは N(RO)-N(K)-N(BG)が0かそれ以下ということだが、この時誤差が0 であるはずがない。 N(ROI) 、N(K)それそれについて誤差があるのだから、 誤差はそのまま、あるいはむしろ大きくなるはずである。

統計学はとういう時の計算方法を教えてくれていて、誤差は √(ΔN(ROI)^2+ ΔN(K)^2) であり この場合は √( N(ROI) +f^2N(K))となっている。(難しい説明はこのエントリーの最後を参照)


測定グラフをみても、セシウム領域にはいっぱいカウントがあり、 N(ROI )N(K) も0ではない、当然引き算をしたあとでも誤差は Bq/Kg で0になるはずがない。 何を表示しているのかさっぱりわからないが300万円で販売されている機械が 0 +/- 0 と誤差として表示するというのは正直いって何かと思う。たまたま、私がいった時期にベルトルートの関係者の訪問があったらしく、LB2045 についてはベルトルート側でなんらかの改善がなされるらしい。

これはLB2045 だけの問題ではない。 福島の市民測定所の AT1320a でも 0 +/- 0 のオンパレードだ。( http://www.crms-jpn.com/mrdatafoodcat/food_grain.htm )  AT1320a の場合プリセットは I 131, Cs 134, 137, K40 の同時測定になっている。バックグラウンドは0ではなく、測定値に0の数字が出る以上バックグラウンドとの差し引きがあると考えられるが、常に誤差 は有限値(30分程度なら5Bq 程度?)のはずである。0pm 0 がでている以上 何かのまるめ操作が入っているが誤差の計算方法については輸入会社が販売会社に問い合わせても返事が来ない状態だと聞いた。

300万円代の食品測定器は最近行政、業者、市民測定所などで導入されているが、誤差の表示方法が誤っているのは問題である。放射線測定において測定中心値は本当の値ではなく、誤差とセットで初めて値に意味がある。このブログでは簡単な場合を説明したが、正しい誤差の計算方法は 文科省で例示されている。(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001us4f-att/2r9852000001us94.pdf)
これに準拠しない装置を業者が販売し、測定者にたいして対処方法を説明をしないのは問題だろう。食品の放射線測定器を販売する会社は最低限誤差表示がこれに準拠するものか公開するべきだし、間違った誤差を表示しているのであれば、正しい誤差を計算する方法を公開する責任があるはずだ。

# 追記 LB 2045 の場合は測定途中で小さい正の値になった場合にとても大きな誤差を出す(たとえば、 0.3269 Bq/Kg で誤差が 20955% など)ので、N(Cs) が負になったとたんに0 +/-0 になる仕様だと考えられる。 市民測定所のAT1320a の場合誤差表示が95% の信頼区間(つまり 誤差の2倍)で測定値がそれ以下の場合は測定所の方針で上限表示がとられる。それ以外に0+/-0 の場合があり、ヨウ素の場合は半分近くが 0+/-0 になっている。おそらくLB2045 と同じ表示方法だろう。またバックグラウンドの量はヨウ素領域のほうが多いはずなのに、ヨウ素の誤差とセシウムの誤差が有限値の場合、ヨウ素の誤差のほうが小さいというやや不思議な現象がおこっている。 いずれにしても0+/-0の丸め表示は、測定時の誤差の情報が落ちてしまうので不適切だと思われる。

2つの誤差の数を引く場合の数学的な説明(ガウス分布の場合)

 N(ROI) と S(K) の測定値を中心として、誤差を軸の長さとする楕円をかいてみよう。
 われわれに興味があるのは N(CS) = N(ROI)-S(K)-N(BG) で、図の中にこれが一定となる直線 (y=x+c の形)が点線でかいてある。楕円にぎりぎり接する線2本が中央値+誤差と中央値ー誤差に対応する。
つまりこの楕円に接する平行な点線の間に真の値がある確率が 68% になる。

d0164049_14273894.jpg

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by mihoko_nojiri | 2011-11-20 14:31 | 物理

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