油断するなここは戦場だ

片対数グラフと飯舘村の安全

早野先生のよく tweet されているグラフの中に片対数グラフがあります。一目盛りごとに1, 10, 100 と桁の違う数字がかいてあるグラフです。このグラフの読み取り方が分からなくて困っているかたは多いようです。
対数については以前から説明考えろといわれていましたので、いい機会ですから この図  を例に比べてみようと思います。

片対数グラフは大きな量とすごく小さい量を同じグラフに書くときに使います。たとえば、今筑波で は 放射線は 0.1μSv くらい、福島県内だと 数 μ Sv だとします.いろいろな場所で値は大きく変わるけれども、日ごとの変化の比率はほぼおなじです。例えばヨウ素はつくばでも福島でも 8日で半分になりますから、この共通の傾向を一つのグラフの中でみたいとき、また、原発から放出があった時は違う場所でにたよう比率で放射線が増のを(たとえば、福島では2→4の時に 筑波では 0.1→ 0.2といったように)こ同じグラフでみたい時に片対数は便利です。

早野先生のグラフ ( http://plixi.com/p/89685373 )の図の上の段をみると、福島と飯館村の値しかみえません。他の場所で値について同時に考えることはこの図では不可能です。また福島市の値は図の右のはしでは、横浜のものと同じようにしか見えません。一方下の図では横浜や水戸の値が同じグラフで見えるだけではなく、いろいろなピーク構造や、雨による放射線の増加までよみとることができます。非常に広い地域の放射線量の分布を比較したい時に片対数グラフを使うのです。(下の)片対数グラフを慣れていない方ががみるときに 一番上の線は1万円札、2番目の線は1000円札、次いで100円、10円、1円だと思うとわかりやすいと思います。福島の放射線は1000円クラス、横浜や水戸の放射線は1円クラス、ということになります。


最近注目されている放射線分布のシミュレーションの等高線もこの 対数目盛りをつかっています。色の一番濃いところを一万円、色が薄くなるたびごとに何分の1かになっていくようなグラフです。これは非常に大きな影響を受ける地域と軽微な影響を受ける地域を同じ地図の上に表現する手法です。いろいろな誤解を生んで騒がれたドイツのシュミレーションや気象庁から発表されたシミュレーションの結果は一番高いところの数字を勝手に「1万円」ときめて計算したものになっています。その図で一円に対応する区域は日本を大きく覆いますが、原発で放射線の大気中放出がない限り、実際に観測される線量はく問題にならない数字です。政府や報道に携わる方はぜひとも計算の意味が伝わるような工夫をして頂きたいと思います。

対数グラフにしたときの放射線の値の大きさは、われわれの健康に対する深刻度の違いでもあります。もしも一時間に 100μSv浴びる地域にいれば、一日で2.4 mSv 一年間で 880mSV 被曝します。福島原発で働いている方の作業環境はいろいろな防護対策をされていても100μSv/h に近いでしょう。一方10μSv/h であれば 一年間で 88mSv です。このくらいの値の放射線を毎年のようにあびていれば、ガンのリスクを相当程度あげるといっていいでしょうが、今すぐ病気になる値ではありません。一方で東京圏の放射線はそのさらに2桁下となり、ほぼ自然放射線と同等です。私が twitter 上で、「もっと福島のことを考えよう」、と時々つぶやいているのはそのためです。

原発の30 Km 圏内でもなく、現在も人がいるエリアで毎日10μSv の放射線にさらされている場所があります。飯舘村後方支援チーム「飯舘村周辺放射能汚染調査暫定報告の発表と対策について」では、高濃度の汚染が報告されています ( http://bit.ly/ewH5Nj )村南部の曲田地域ではもっとも放射線量が高かった時は ~100μSv/h と推定され、 現在でも10μSv/h を遥かに越える線量になっています。完全に屋外にいた場合、やや放射線の少ない村役場でも 現在の積算は15mSv になる勘定です。家屋内ではやや軽減されますが、10mSv をめやすに対策されるべき妊婦や子供の健康にとってすでに問題となる量をいえるでしょう。ヨウ素からくる放射線は 8日で1/2に減っていきますが、半減期30年のセシウムがあり、今後放射線のレベルはそれほど大きくかわりません。村役場で汚染がはじまってから90日の積算は 30mSvと予想されています。

早急な対策が必要なはずですが、動きが大変鈍いのが心配です。たまたま目にした4月5日の県の資料では、飯館村村役場の1時間辺の放射線量 5.93 μSv を、X 線検査の一回の被曝量 600μSvと比較して、十分少ないから安全であるというコメントすらついていました。 ( http://ow.ly/4t36t ) 県には、支援チームの勧告の内容を理解して、今すぐ対策をとっていただきたいと思います。
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by mihoko_nojiri | 2011-04-06 00:07

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