油断するなここは戦場だ

暗黒物質と不活性気体

暗黒物質は見えない粒子だというのだけど、見えないというのはどういうことだろうか。

われわれの視覚を分子レベルに還元すると、網膜の中にはレチナールという物質が光にあたることによって形状が変わる仕組みに乗っかっている。(http://www.orgchem.org/yuuki/rodopsin/rodopsin.html)見るということは分子レベルに還元すれば光と物質の「相互作用」ということになる。一方で、見えるためには光をださないといけない。我々がお互いに相手がみえるのは、我々の体の表面が特定の波長の光を反射する性質をもっているということになる。体は原子核と電子でできているので、我々がお互いを見ることができるのは、電子や、陽子が電荷をもっているということを意味している。

測定するのが簡単な粒子も、電荷をもっている粒子だ。KEK のコミニュケーションセンターには、スパークチェンバーという装置があっって、電荷をもった粒子(宇宙線)が通っていく様子をみることができる。http://www.kek.jp/newskek/2003/sepoct/sparkchamber.html この装置の原理はこうだ。電荷をもっている粒子が気体の中を通ると気体のなかから電荷をたたき出す。このとき、電場がかかっていると、電子は移動しながらさらに他の気体から電子をたたき出していく。最初の反応ででる電荷がわずかでも、電圧をかけることによって、大きな信号を取り出す事ができる。高電圧をかけるので、このスパークチェンバーにいれる気体としては、不活性気体が選ばれる。 KEK に今あるものは、ヘリウムガスを使っているし、この50年以上前に装置を最初に作った大阪大学の福井•宮本はネオンを使った。

このような仕組みでは電荷をもっていない粒子では働かない。最初の電子をたたき出す反応がほんのちょっとしかおきないからだ。暗黒物質も電荷が0の粒子だと考えられている。そうでなければ、スパークチェンバーで簡単に発見されてしまうだろう。


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で、前置きがながかったんだけど、今日はこの不活性気体の話をする。なぜかというと、不活性気体というのは、ちょっと暗黒物質と似ているところがあるからだ。

化学は全然専門ではないので、奥野氏の著作 http://ci.nii.ac.jp/naid/110001824632 と、wikipedia から拾ってきた知識で話をする。
アルゴンは原子番号18番、最初に発見された不活性気体だ。この気体を発見したのは レイリー(Rayleigh) と ラムゼー(Ramsay) で、この研究からノーベル物理学賞とノーベル化学賞をもらっている。

レイリーの当初の研究の動機はプラウトの仮説の再検討だ。プラウト仮説は「物質の基本的な構成要素は水素であり、原子核の質量は水素の整数倍である」、というものである。今日的な観点にたてば、原子核は陽子と中性子によって構成されており、これらの質量はほとんど同じであるから、この仮説はかなり、ことの本質をとらえている。近代科学における最初の素粒子論といってもいいかもしれない。

当時の研究でもプラウト仮説は塩素、マグネシウムなどいくつかの元素について「だめだめ」だということが知られていた。例えば 塩素は自然界では35Clと 37Cl が混合した気体だから原子量が 35.5 でどうみても整数にならない。でも、同位体の少ない元素についてはこの仮定が精密に成り立つので、捨てるに捨てがたい仮説であったと想像する。研究を進めていくうえで、荒っぽい仮説が実は本質をとらえている例はほかにもある。精密な測定がある仮説を否定しても、それがずれが思いがけない別の事実によって引き起こされているといったことは、サイエンスの世界ではよく有ることなのだ。。

レイリーの研究は窒素化合物から窒素を合成し、窒素ガスの密度を計るものであった。彼はこれ以外にも大気から、酸素、二酸化炭素、水蒸気等をのぞいたガス(つまり当時の知見において窒素ガスだと思われるもの)についても質量の測定を行った。つまり作り方の違う2つの窒素ガスの密度を測定したのである。驚いたことにこの2つの値は有意に異なっていて、大気から得られた窒素は化学合成した窒素に比べて重さが 0.5 % 多くなっていた。これまでの方法では取り除けない何かが、気体に混ざっているのである。このあと、化学者であるラムゼーが大気から窒素を除去し、残った気体の密度を測定した。それは水素の気体の19倍の重さを持っていて(アルゴンの原子量は40であったが、この時点での精度)、ほとんど科学反応をしなかた。

アルゴンは化学的なアプローチ、つまり気体反応を観察するという観点では「見えないもの」であり、物理の中での暗黒物質の位置づけと似ていることは興味深い。この不活性な気体は「怠け者」を意味する 「アルゴン」という名前がつけられた。1894年のことである。その後、ラムゼーは様々な共同研究から他の不活性気体を発見している。(クリプトン、ネオン、キセノンは 1898 年に発見された。)不活性気体のなかで最も軽いヘリウムの発見はもう少し複雑な経緯を辿っている。1868年、太陽の出す光のなかから、これまで知られていなかった未知の輝線が発見される。ラムゼーがウラン鉱からこれに対応するヘリウムを発見したのは、1895年のことである。ヘリウムは通常大気中には存在しないので、地球上で作られている場所で集めなければならなかったのだ。ヘリウムがなぜ太陽に多数あるか、それが太陽の出す熱とどういう関係なのか当時の人は知らない。ケルビンとヘルムホルツは太陽の収縮からでる熱量によって太陽活動を説明しようと試み、太陽の寿命は2000万年という結果を出している。宇宙の元素のうち27% がヘリウムとして存在しているので、宇宙の物質のかなりの部分は不活性気体だという言い方もできる。

話を暗黒物質にもどす。現在宇宙のなかにあるエネルギーのうち74%がダークエネルギー(宇宙項)で、22%が暗黒物質、残りの4%が我々を構成する原子だということがわかっている。宇宙の中にある物質をならすと5/6くらいが暗黒物質というのはちょっと気味が悪い話ではある。これはきっと素粒子でわれわれの周りをとびまわっているんだけど、我々はそれに気がつかない。地球周辺では、暗黒物質の速度は平均的には230Km/sくらいだと思われていて、質量密度が一立方 cm あたり陽子 0.3 個分くらいはあるはずなんだけど、それってどういう事か、例えば、自分の体を一秒にどのくらいの量が通り抜けてるか、計算してみるとかどうだろうか?

追記以前に半分だけかいたものを編集してアップしました。
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by mihoko_nojiri | 2010-07-14 18:28 | 宇宙物理

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